概要
督促処理(督促プログラムともいう)は、得意先に対して督促状を出す機能である。
督促処理は説明すべき内容が多いため、数回に分けて説明する。3回目は、督促処理の実行について。実際に実機を触った方がわかりやすいので、ざっと説明に目を通し、後は実機ベースで理解することをオススメする。
カスタマイズ、トランザクションコード
- FBMP – 督促処理更新
- F150 – 督促処理
- FD02 – 得意先マスタ変更
督促処理の実行
初回にも触れているが、督促処理は以下の流れで実行する。
1 | パラメータ入力 | 督促の対象伝票の抽出条件を指定する |
2 | 督促処理実行スケジュール | 督促の対象伝票の抽出処理 ※「スケジュール」という名称だが、単なる抽出処理 |
3 | 提案編集(任意) | 抽出結果に対して、手入力による修正を行う |
4 | 督促状印刷 | 督促状を印刷する、加えて督促状況(督促レベル)を更新する |
それぞれの処理や操作について、具体的に見ていこう。
パラメータ入力
督促処理の対象となる伝票の抽出条件を指定する。具体的には、以下の条件を指定する。
- 会社コード:どの会社コードの取引か
- 得意先、仕入先コード:どの得意先、仕入先か
- 転記日付:どの期間の転記日付を対象とするか
督促処理実行スケジュール
パラメータで入力した条件、マスタの設定、その他システムの設定をもとに、督促対象の伝票を抽出する。
具体的には、以下3つの処理が行われている。
- 勘定の選択
- 「勘定」と言っているが、得意先、仕入先のこと。パラメータの条件に従って、督促対象の得意先、仕入先が選定される。
- このとき、得意先、仕入先マスタは以下の条件を満たす必要がある。
- マスタデータに督促処理が設定されている
- マスタの最終督促処理実行日から督促間隔日数が経過している
- 明細の督促処理
- ステップ1で選定された得意先、仕入先に対して、支払期日が超過した明細を洗い出す。督促対象の場合は、どの督促レベルで督促するかを判断する。
- 初回の督促であれば、督促レベル1がセットされる。次回以降は、最終督促処理実行日から督促間隔日数が経過していると、督促レベルを1上げる。
- 勘定の督促処理
- ステップ2で洗い出しされた明細に対して、督促を行うかがチェックされる。督促対象の場合は、どの督促レベルで督促するかを判断する。
処理が終わると、抽出された明細が督促一覧に表示される。例外がある場合は、例外一覧に表示される。
督促保留
支払期日を超過している明細であっても督促保留をセットしていると、督促状出力の対象から除外される。督促保留のセットには2通りある。
- 伝票の明細に督促保留をセットする
伝票レベル(明細レベル)で督促保留を設定する場合に利用する。督促保留をセットした明細は、保留明細一覧に表示される。 - 得意先、仕入先マスタに督促保留をセットする
得意先、仕入先レベルで督促保留を設定する場合に利用する。督促保留をセットした得意先、仕入先は、保留勘定一覧に表示される。
督促キー
明細に督促キーを割り当てることによって、その明細が一定の督促レベルを超えないようにする。特定の得意先は最大のレベルまではいかないようにする、といった運用に利用する。
設定については、8-2.督促処理-督促処理の設定を参照。
提案編集(任意)
抽出結果に対して、手入力による修正を行う。実施できる内容は以下のとおり。
- 督促データの明細に対して、督促保留をセットする/督促保留を解除する
- 督促データの得意先、仕入先に対して、督促保留をセットする/督促保留を解除する
- 得意先、仕入先マスタデータの変更する(督促処理データと連絡文書項目のみ)
- 督促明細の伝票内容を変更する
督促状印刷
督促状を印刷する。加えて督促状況(督促レベル)を更新する。
- 督促状は得意先、仕入先ごとに督促対象の明細を一覧化して出力する
- 一つの得意先に対して、複数の会社から督促状を送る場合、会社コード間督促処理を利用することで、督促状をまとめることができる。
- 督促状の記載内容は、督促テキストで管理している。重要な項目は以下のとおり。
- 督促金利:督促処理設定の金利に応じて計算される。最低額の利用も可能。
- 支払期日:支払期日の更新をしている場合、次回の支払期日が表示される。
- 督促手数料:督促処理設定の手数料に応じて計算される。最定額の利用も可能。
カスタマイズ操作方法
過去2回に渡って準備してきた内容をもとに、督促処理を実施する。
今回は、月次の支払処理を想定し、以下の前提で支払を実施する。
事前確認
まずは、支払期日を超過した債権明細を確認する。
- SAPメニュー>会計管理>財務会計>債権管理>勘定コード>明細照会/変更(Tr-Cd:FBL5N)を選択する。
- メニューバー>設定>レイアウト>選択 からISAP-D[督促処理データ]を選択し、督促情報を表示する。
- 得意先「Customer01」に対して、支払期日を超過した未消込明細があることを確認する。
マスタの督促処理情報を確認する。
- SAPメニュー>会計管理>財務会計>債権管理>マスタレコード>照会(Tr-Cd:FD03)を選択する。
- 得意先コード「Customer01」、会社コード「1000」を入力し、Enterを押下する。
- 一般データ>住所タブ>通信>言語 が「日本語」であることを確認する。
- ALVメニューバー>会社コードデータ をクリックする。
- 「連絡文書」タブを選択し、督促処理「0001」が割当されていることを確認する。
パラメータ入力
- SAPメニュー>会計管理>財務会計>債権管理>定期処理>督促処理(F150)を起動する。
- 以下のデータを入力する。
督促日付 | 本日の日付 |
ID | 000001(任意) |
- パラメータタブをクリックし、以下のデータを入力して保存する。
督促日付(※1) | 2020/6/1 |
基準転記日付(※2) | 2020/6/1 |
会社コード | 1000 |
勘定制限: 得意先コード | Customer01 |
督促処理実行スケジュール
- ステータスタブをクリックし、「計画」ボタン、もしくはメニューバー>督促状メニュー>督促処理実行スケジュール を選択する。
- 「即時開始」をONにして、Enterを押下する。
- メニューバー>編集>リフレッシュ を選択し、処理が完了するまで確認する。
- 「督促処理一覧」をクリックし、処理結果を確認する。
提案編集
督促提案の編集を行う。今回は、この画面で編集できることを押さえる意図で、督促保留のセット→督促解除を同時に行う。
- メニューバー>督促状メニュー>督促状変更 を選択する。
- 督促提案画面で「実行」ボタンをクリックする。
- 任意の督促明細(得意先請求書)をダブルクリックする。
- 督促処理保留に「A」、督促レベルに「1」を入力して、保存する。
→督促保留がセットされることを確認する。 - 再度、同じ督促明細(得意先請求書)をダブルクリックする。
- 督促処理保留を空白(値があれば削除)して、保存する。
督促状印刷
- 「督促状印刷」ボタン、もしくはメニューバー>督促状メニュー>督促状出力スケジュール を選択する。
- 「即時開始」をONにして、Enterを押下する。
- メニューバー>編集>リフレッシュ を選択し、処理が完了するまで確認する。
印刷された督促状を確認する。
- SAPメニューに戻り、システム>サービス>出力制御 を選択する。
- 出力管理: スプール依頼選択画面で「実行」ボタンをクリックする。
- 督促状を選択(チェックボックスON)し、メニューバー>ジャンプ>依頼照会>内容 を選択する。
→印刷プレビューが表示される。
督促処理による更新の確認
まずは、明細の確認から。
- SAPメニュー>会計管理>財務会計>債権管理>勘定コード>明細照会/変更(Tr-Cd:FBL5N)を選択する。
- メニューバー>設定>レイアウト>選択 からISAP-D[督促処理データ]を選択し、督促情報を表示する。
- 得意先「Customer01」に対して、支払期日を超過した未消込明細があることを確認する。
- 以下、未消込明細の督促情報が更新されていることを確認する。
- 最終督促日
- 督促レベル(「1」がセットされる)
マスタの督促処理情報を確認する。
- SAPメニュー>会計管理>財務会計>債権管理>マスタレコード>照会(Tr-Cd:FD03)を選択する。
- 得意先コード「Customer01」、会社コード「1000」を入力し、Enterを押下する。
- ALVメニューバー>会社コードデータ をクリックする。
- 「連絡文書」タブを選択し、督促情報が更新されていることを確認する。
- 最終督促日
- 督促レベル(「1」がセットされる)
テーブル
テーブルID | 内容説明 | 備考 |
---|---|---|
LFA1 | 仕入先マスタ(一般セクション) | 仕入先マスタの一般データレベルの情報を保持 |
LFB1 | 仕入先マスタ(会社コード) | 仕入先マスタの会社コードレベルの情報を保持 |
LFB5 | 仕入先マスタ(督促処理データ) | 仕入先マスタの督促処理に関するデータを保持 |
KNA1 | 得意先マスタ:一般データ | 得意先マスタの一般データレベルの情報を保持 |
KNB1 | 得意先マスタ(会社コード) | 得意先マスタの会社コードレベルの情報を保持 |
KNB5 | 得意先マスタ(督促処理データ) | 得意先マスタの督促処理に関するデータを保持 |
演習問題
※複数回答の設問あり。
※答えはドラッグすると見れる。
次の文章について、正誤を答えよ。
得意先に対して督促が行われるのは、支払期日を超過したすべての明細が最低延滞日数を超えている場合に限られる。
A. 正
B. 誤
正解:B
次の文章について、正誤を答えよ。
督促処理を実行すると、督促明細および得意先の督促処理データが更新される。
A. 正
B. 誤
正解:B
得意先の督促処理データは、督促状が印刷されると更新される。
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