概要
原価計算において品目BOMは重要なマスタになる。また、品目BOMは様々な領域で使用されるマスタであり、項目が多い。ここでは管理会計、特に原価計算に関連する項目に絞って解説する。
カスタマイズ、トランザクションコード
- CS01 – 品目BOM 登録
- CS02 – 品目BOM 変更
- CS03 – 品目BOM 照会
数量構成ありの品目原価見積
数量構成とは、品目の構成を表す。具体的には、品目のBOMや作業手順、レシピなどの生産領域のマスタを指す。
原価計算には、「数量構成あり」と「数量構成なし」の2種類がある。「数量構成あり」とは、品目のBOMや作業手順、レシピを考慮して原価計算する。逆に「数量構成なし」とは、BOMや作業手順を考慮せずに原価計算する。
- 品目マスタに加えて、BOM(部品の構成)と作業手順がSAP内に登録されていることを前提とする。
- 使用例は、原価計算に必要な製造原価や販売原価を計算する場合、製造指図を参照しない原価計画や価格設定をする場合、標準原価による在庫評価を行う場合、など。
※参考:管理会計(CO)6-1.製品原価計画(PCP)の概要
品目BOM(部品表/配合表)
品目BOM(部品表/配合表)とは
品目BOMは、品目の構成部品を表す。日本語だと部品表という言い方をするが、多くの場合、単に「BOM(ボム)」と呼ぶ。主に生産領域で使うマスタである。
※6-1.製品原価計画(PCP)の概要に引き続き、車の原価計算を例にBOMイメージを提示する。
上図の例に、車のBOMを見ると、車がボディ、エンジン、タイヤ×4で構成されていることがわかる。図でもわかるとおり、原価積上においてBOMは材料費の情報源になる。
また、BOMは様々なアプリケーション(領域)で利用される。代表例としては、次のパターン。
- 【調達】所要量計画:資材の所要量計算(MRP)に利用する。部品、原材料をどれくらい調達するかを計算する。
- 【生産】製造:製品の生産に必要な部品、原材料を取得する。
- 【管理会計】原価計算:品目原価の計算時、製品の構成品目を取得する。
原価計算レベル
原価計算レベルは、マルチレベルの原価計算を制御するために内部的に付ける番号。多段階のBOMを持つ品目の原価を計算するには、下層の品目から順番に材料費を積み上げていかなければならない。このとき、下層の品目はどれか(どの順番で材料費を計算するか)を決めるのが、原価計算レベルである。
【BOM構成の例】
※Levは原価計算レベル
最終製品(Lev4)┳原材料(Lev1)
┣半製品(Lev3)━原材料(Lev1)
┗半製品(Lev3)┳半製品(Lev2)━原材料(Lev1)
┗原材料(Lev1)
大前提として、原材料→半製品→最終製品の順で計算する必要があるので、それにあわせてレベルを付ける。また、半製品についは、半製品でも下層の品目を先に計算するようにレベル付けする。
なお、BOMに含まれない原価見積の明細には、レベル0が付けられる。
BOMヘッダ
BOMマスタのヘッダ情報には、以下を設定する。
ステータス
BOMステータスは、その名の通りBOMの状況を表す。ステータスに応じて、できる処理が制御される。例えば、設計で構築中ステータスのBOMは、MRPや生産管理、原価計算に利用できない。
BOMステータス | MRP展開 | 計画手配 | 原価承認 | 作業計画承認 | 指図承認 | 一括出庫 | 受注 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
[1]有効 | ☑ | ☑ | ☑ | ☑ | ☑ | ☑ | ☑ |
[2]無効 | □ | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
[3]有効(履歴必要) | ☑ | ☑ | □ | ☑ | □ | □ | ☑ |
BOMを原価見積で使用するには、原価承認がONのステータスをセットする。
品目BOMの用途
BOM用途は、BOMを使用するアプリケーション(領域)を制御している。BOMを原価計算で利用するには、原価計算フラグがONになっているBOM用途をセットする必要がある。
BOM用途 | 生産 | 設計 | PM | 予備 | 販売管理 | 原価計算 |
---|---|---|---|---|---|---|
[1]生産 | + | . | – | . | – | . |
[2]設計/デザイン | . | + | – | . | – | . |
[3]一般 | . | . | – | . | . | . |
[4]プラント保全 | – | – | + | . | – | . |
[5]販売管理 | . | . | – | . | + | . |
[6]原価計算 | . | . | – | . | . | + |
BOM用途のカスタマイズは、上記のイメージ。用途ごとに各アプリケーションで利用できるかどうかがプロットされている。設定できる区分は、次の3パターンのいずれか。
- [+]必須エントリ:原価計算でBOMを必ず利用する
- [.]オプションエントリ:原価計算でBOMを任意で利用する
- [-]エントリなし:原価計算でBOMを利用しない
原価計算において、押さえておくべきポイントは以下。
- 原価計算で利用するには、原価計算のフラグが[+]or[.]の用途をBOMにセットする。
- 原価見積のみに使用するBOMは、BOM用途「[6]原価計算」をセットする。
- SAP標準で用意されているBOM用途の他に、ユーザ独自の用途を追加できる。
代替BOM
代替BOMは、同じ品目に対してバージョン違いでBOMを持たせる機能。他ブログで詳しく説明されているので、そちらの説明をお借りする。詳しくは、引用元を参照いただきたい。
代替BOMとは、BOMのバージョンのことです。
SAPコンサルブログ
例えば、季節変動でカレーのルー:200ML 作るのに、通常は水:200ML でいいのだが、夏は蒸発しやすいので水:220ML 必要だとします。
この場合、代替BOM:1 では構成品目の水:200ML。
代替BOM:2 には構成品目の水:220ML。
と設定することにより、BOMの使い分けをできるようにします。
これを「代替BOM」を使って、1つの生産品目に対し、複数の構成品目情報を持たせることができます。
ロットサイズ(基本数量)
生産ロット単位。特に意識しない場合は、「1」でよい。車の生産でいうと、”1台を生産するためのBOM”とするのか、”10台を生産するためのBOM”とするのか、を制御する。まとめてごそっと作る製品は、生産ロット数を入れておくと管理しやすくなる。
BOM明細
BOMマスタの明細情報には、以下を設定する。
数量(構成品目数量)
そのまま構成品目の数量を入力する。車の例だと、タイヤの数量に「4」を入力する。
明細カテゴリ
明細カテゴリは、明細を分類しているもの。BOM明細の初期値などを制御している。代表的な区分は、以下のあたり。
- [L]在庫品目
- [N]非在庫品目
- [R]可変サイズ品目
[N]非在庫品目について
[N]非在庫品目は、在庫管理しない品目にセットする。例えば、バルク品(後述)は、在庫管理しないため「[N]非在庫品目」をセットする。常に外部から調達され、調達と同時に指図に割当される(=消費される)。
また、原価計算における金額情報は、次のいずれかのパターンで取得される。
- 品目マスタがある場合:会計ビューから金額データを取得する
- 品目マスタがない場合(テキスト管理の場合):金額データをBOM明細に直接入力する
固定数量フラグ
ロットサイズに関係なく消費するものに対して、固定数量フラグをONにする。例えば、梱包材など。1つ作っても2つ作っても1つに梱包する場合に利用する。固定数量フラグをONにすると、生産数に関わらず同じ数量が使用される。なお、代替明細と連産品については、このフラグをONにできない。
構成品不良率
構成品不良率は、部品の不良品率を設定する。設定値は、%で指定する。例えば、ネジ100個のうち、不良品が5個混ざっているとすると、5%と入力する。そして、所要量計算(MRP)の処理時、この不良率を考慮して必要数を計算する。
作業不良率
構成品不良率は、作業の失敗率を設定する。先程の構成品不良率の作業手順版である。例えば、10%を入力すると、作業手順マスタで10hとされている作業が11hで計算される。
連産品フラグ
そもそも連産品とは、ひとつの製品を作る際に一緒にできる品目のこと。例えば、牛を加工してサーロインを精肉すると、同時にバラやヒレなどもできる。このバラやヒレなどを連産品という。
この例では、サーロインだけ作ることはできず、必ずバラとヒレができる。ただし、SAPのBOMでは複数の製品が生産されることを管理できない。そこで、連産品フラグを利用する。
連産品となる品目には、連産品フラグを立てる。先程の例だとサーロインのBOMに牛があり、同時にバラとヒレも構成品目に入れる。そして、バラとヒレには連産品フラグを立てる。するとサーロイン完成時に、バラとヒレの数量もプラスされる(入庫という扱い)。
【重要】原価計算フラグ
原価計算に含めるかどうかを制御するフラグ。このフラグがブランクの構成品目は、原価計算に含まれない。
なお、フラグという名前だが区分値を持っている。基本は[ ](ブランク)か、[X]を使う。
- [ ]原価計算無関係
- [1]原価計算50%関係
- [2]原価計算25%関係
- [3]原価計算75%関係
- [X]原価計算100%関係
バルク品目フラグ
バルク品に対して、バルク品目フラグをONにする。バルク品とは、ネジやボルトなど、在庫管理しない消費品目のこと。在庫管理しないため、明細カテゴリは「[N]非在庫品目」をセットする。
また、バルク品は、原価計算に含まれない。原価計算に含めず(直接材料費に含めず)、間接費として算出する形が推奨されている。どうしても原価計算に含めたい場合は、ユーザExitを使う。
なお、品目マスタ>MRP2ビュー にもバルク品フラグがあり、このフラグをONにしていると、BOMのバルク品フラグがONで初期値セットされる。初期値であり、BOMマスタ登録時に変更可能。
カスタマイズ操作方法
【品目BOMマスタ】
ロジスティクス>生産>マスタデータ>部品表/配合表>品目BOM>登録(Tr-Cd:CS01)
【カスタマイズ】
- SPRO>ロジスティクス – 一般>プロダクトライフサイクルマネジメント(PLM)>基本データ>部品表/配合表>一般データ>
- BOM用途>定義: BOM 用途
- 定義: BOM ステータス
テーブル
テーブルID | 内容説明 | 備考 |
---|---|---|
STKO | BOM ヘッダ | |
STPO | BOM 明細 | BOMの構成品の一覧を保持 |
STAS | BOM – 明細選択 | |
MAST | 品目の BOM へのリンク | 品目とBOMの紐付きを保持 |
STPU | BOM 副明細 |
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