概要
支払条件と現金割引について、解説する。設定する項目が多く、かつ仕入先/取引先との取引に大きく影響する。加えて、試験問題にもよく出てくる。実務的にも試験的にも重要なのでしっかり押さえておこう。
カスタマイズ、トランザクションコード
- OBB8 – 支払条件
- FK02 – 仕入先マスタ 変更
- FB60 – 仕入先請求書登録
支払条件
支払条件とは
支払期日に関する設定を持っているマスタである。また、現金割引(支払期日より前に支払することで割引を受けること)に関する設定も可能。たとえば、「○○工業から仕入れたは、翌月末までに支払う。ただし、請求から1週間以内に支払すれば2%の割引を受けられる。」といったもの。
自社から仕入先への支払、得意先から自社への支払、どちらも支払条件マスタで管理している。SAP標準で用意されているが、追加も可能。
具体的には、以下の情報を保持している。支払期日の日付を直接管理しているのではなく、支払期日を算出するための条件を管理していると思えばいい。
- 支払基準日(支払期日の計算元となる基準日)
- 現金割引期間
- 現金割引率
支払条件の割り当て、支払条件の決定ロジック
支払条件は、仕入先/得意先マスタに割り当てる。割り当てるレベルは、マスタの会社コードセグメント、もしくは購買組織セグメント(得意先の場合は販売エリアセグメント)に割り当てることができる。両方に割り当てることも可能。
これは、使うユーザが異なるという想定で作られているためである。財務担当者は会社コードセグメントの支払条件を利用し、購買/販売担当者は購買組織/販売エリアセグメントの支払条件を利用することを想定している。
そのため、財務会計のトランザクションから伝票登録する際は、会社コードセグメントの支払条件が初期値として提案され、購買/販売のトランザクションから伝票登録する際は、購買組織/販売エリアセグメントの支払条件が初期値としてセットされる。
セットされた支払条件は初期値のため、手入力による上書きが可能。
支払条件の「支払管理」項目(支払保留キー、支払方法)
支払条件には支払期日、現金割引に関する情報以外に以下を管理している。
- 支払保留キー(保留キー)
- 債務の支払、債権の回収を止めておく機能。伝票の起票者と承認者が別れており、起票者が伝票登録した際は支払(回収)せず、承認者が承認した際に支払(回収)するといった運用で利用される。
- 支払方法
- 何で支払をするのか(現金か、預金か、手形か、など)を管理する項目
期限(請求書の日付によって支払条件を分岐させる方法)
期限とは、請求書の日付(支払基準日)によって支払条件を分岐させる方法である。たとえば、「20日締めの翌月15日払い」という支払条件を設定する場合に期限を活用する。あくまで、支払条件キーは同じで期限ごとに支払条件を設定している、という点に注意。
- 支払基準日が4/20以前:5/15が支払期日
- 支払基準日が4/21以降:6/15が支払期日
分割支払
支払を分割して行う場合に利用する。たとえば、請求金額の半分を月末に支払い、残りを翌月に支払うなど。支払条件マスタの「分割支払」をONにすることで利用可能になる。
カスタマイズ操作方法
以下の要件を満たす支払条件を新たに追加する。
- 即時支払の場合、5%の現金割引
- 14日以内の支払の場合、2%の現金割引
- 30日以内の支払の場合、控除なし
- 支払基準日は転記日付
支払条件の登録:OBB8
- SPRO>財務会計>債権管理および債務管理>会計トランザクション>銀行支払請求/クレジットメモ>更新: 支払条件 を選択する。
- 編集>新規エントリを選択する。
- 以下のデータを入力し、保存する。
支払条件(支払条件キー) | Z001 |
勘定タイプ | |
得意先コード | OFF |
仕入先コード | ON |
支払基準日初期値 | 転記日付 |
支払条件:条件1 | |
パーセント | 5% |
日数 | 空白 |
支払条件:条件2 | |
パーセント | 2% |
日数 | 14 |
支払条件:条件3 | |
パーセント | 空白 |
日数 | 30 |
仕入先マスタレコードヘの新しい条件の割当:FK02
- 会計管理>財務会計>債務>マスタレコード>変更 を選択する。
- 仕入先コード「Vender01」を入力し、一般データタブの支払処理をチェックし、Enterを押下する。
- 支払条件「Z001」を入力し、保存する。
設定を確認する(仕入先請求書の登録):FB60
支払条件が正しく設定されているか確認する。
- 会計管理>財務会計>債務>伝票入力>請求書(Enjoy) を選択する。
- 仕入先に「Vender01」、転記日付に「2020/4/1」を入力し、支払タブをクリックする。
- 仕入先「Vender01」に登録した支払条件「Z001」が、セットされていることを確認する。
また、支払条件「Z001」に設定した内容が反映されていることを確認する。- 支払基準日:転記日付(2020/4/1)
- 支払期日:30日後(2020/4/30)
- 現金割引期間、割引率:支払条件の設定値
テーブル
テーブルID | 内容説明 | 備考 |
---|---|---|
T052 | 支払条件 | |
TVZBT | 支払条件テキスト | |
T052U | 支払条件の独自説明 | |
LFB1 | 仕入先マスタ(一般) | |
KNA1 | 得意先マスタ(一般) |
演習問題
※複数回答の設問あり。
※答えはドラッグすると見れる。
支払保留キーを伝票に入力する方法として何があるか。
A. 支払条件に支払保留キーを設定する
B. 仕入先に支払保留キーを設定する
C. 得意先に支払保留キーを設定する
D. 伝票登録時に支払保留キーを直接入力する
正解:ABCD
支払条件を仕入先マスタに割当する。どのレベルに割当可能か。
A. クライアントレベルセグメント(一般データセグメント)
B. 会社コードセグメント
C. 購買組織セグメント
D. 販売エリアセグメント
正解:BC
支払条件について、現金割引期間はいくつ登録することができるか。
A. 1つ
B. 2つ
C. 3つ
D. 4つ
正解:C
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