概要
消込について解説する。試験対策としても実務でも大切なポイントである。
文字で説明すると分かりづらいが、実際SAPを触ってみると大したことはない。是非、実機を触りながらキャッチアップしてほしい。
カスタマイズ、トランザクションコード
- F-28 – 入金転記
- F-53 – 支払転記
- F-32 – 得意先消込
- F-44 – 仕入先消込
- F.13 – 自動消込
- FBL5N – 得意先明細照会
- FBL1N – 仕入先明細照会
消込について
消込とは
消込とは、借方・貸方に同じ勘定で同じ金額があり、その両方を相殺すること。システム的には、未消込テーブルから消込済テーブルへデータが移動する。
たとえば、掛けで仕入れた商品に対する支払が消込にあたる。
2種類の消込方法:消込転記、勘定消込
消込の方法は2通りある。消込転記と、勘定消込だ。どちらも「消込」という名称のため、会話する際はどちらの消込の話をしているか注意すること。
消込転記 | 新たな伝票を作り、支払or入金と消込を同時に行う。たとえば、売上に対して入金が行われた時に利用する。 |
勘定消込 | 独立した伝票(請求書とクレジットメモ)を紐付ける。たとえば、売上に対して返品があった時に利用する。 |
消込転記
前述のとおり、消込転記は新たな伝票を作り、支払or入金と消込を同時に行う。 請求書などの未消込明細を消し込む場合に利用する。
ポイントは以下の点。
- 支払or入金の伝票ができる(消込伝票)
- 転記時に現金割引の金額を手入力することが可能
- 対象の未消込明細が消込される(得意先明細照会(Tr-Cd:FBL5N)などの照会画面では「消込済」となる)
- 消込済テーブル(BSAK:仕入先の決済明細、BSAD:得意先の決済明細)にデータが格納される
マニュアル支払処理(マニュアル消込):F-28、F-53
マニュアル支払処理(以降「マニュアル消込」と記載)は、請求書の支払or入金において、消込する未消込明細と支払or入金金額を手入力する方法である。
なお、入力画面に少しクセがあるので、カスタマイズ操作方法で具体的な操作を補足する。
自動支払処理:F110
自動支払処理は、その名のとおり消込転記を自動で処理する機能。自動支払処理に関する設定やマスタ、機能の実行については、財務会計(FI)7-1.自動支払-自動支払処理の概要、銀行マスタで解説する。
勘定消込
前述の通り、勘定消込は独立した伝票(請求書とクレジットメモ)を紐付ける処理。たとえば、売上に対して返品があった時に利用する。
ポイントは以下の点。
- 未消込明細を紐付けした伝票ができる(消込伝票)
- 消込伝票に明細はなく、紐付けした伝票番号の情報のみを持つ
- 対象の未消込明細が消込される(得意先明細照会(Tr-Cd:FBL5N)などの照会画面では「消込済」となる)
- 消込済テーブル(BSAK:仕入先の決済明細、BSAD:得意先の決済明細)にデータが格納される
- マニュアルで消込する方法と、自動で消込する方法がある(詳しくは次項で説明)
- 伝票に未消込明細が残る場合(ややこしいので、理解しにくければスルーしてOK)
- 消込伝票に明細ができる(全明細消込した伝票の貸借相殺した仕訳)
- 残った未消込明細は、消込済みテーブルへデータは移さない(得意先明細照会(Tr-Cd:FBL5N)なども「未消込」のまま)。
マニュアルでの勘定消込:F-32、F-44
その名の通り、手動で勘定消込する方法。紐付けする対象の明細を選択し、転記することで消込伝票が登録される。
消込プログラム(自動消込):F.13
消込プログラム(以降「自動消込」と記載)は、 借方・貸方に同じ勘定で同じ金額があり、その両方の相殺を自動で行う方法である。 マニュアルでの勘定消込を自動化したものと捉えていい。自動消込では、総勘定元帳と補助元帳の未消込明細のみ消込可能。
消込は、同じ特性をもつ(特定の項目に同じ値を持つ)明細をグルーピングし、そのグループ内で貸借(金額)が一致すれば消込するという形で行う。ここでいう同じ特性とは、以下の項目が同じ値であることを指す。
- 会社コード
- 勘定タイプ
- 勘定コード
- 統制勘定コード
- 通貨
- 特殊仕訳コード
また、上記の6項目ではグルーピングされる明細が多くなりがちなため、ソートキーを用いてさらに細かくグルーピングできる。
消込プログラム(自動消込)の事前準備
自動で行うということは、自動で行うためのルール(マスタ)を定義する必要がある。必要な準備は、以下の2点。
- 自動消込のルールをカスタマイズする
【SPRO>財務会計>総勘定元帳>取引>未消込明細消込>準備: 自動消込処理】 - 勘定コードマスタの「明細消込管理」フラグをONにする
※統制勘定は不要
自動消込については、深いところまでテストに出ないため、ここまでの解説に留める。さらに細かい解説については、要望があれば記載するが、現状は参考となるリンクを貼る形とする。
※参考:【SAP】自動消込機能について解説【FI】 | yoiblog
カスタマイズ操作方法
今回は、マニュアルの消込転記とマニュアルの勘定消込を演習する。
消込転記:F-28
消込転記の中でも得意先請求書の入金転記(Tr-Cd:F-28)を実施する。シナリオとして、販売した商品に対して入金する想定で、SAPにて販売(得意先請求書)→入金(消込)を実施する。実施は次の手順で行う。
- 消込対象となる明細(得意先請求書)の登録:FB70
- 消込転記前の状態を確認(得意先明細照会):FBL5N
- 消込転記の実施:F-28
- 消込転記後の状態を確認(得意先明細照会):FBL5N
まず、未消込明細を用意するために、得意先請求書を登録する。
- 会計管理>財務会計>債権管理>伝票入力>請求書(Enjoy)(Tr-Cd:FB70)を選択する。
- 以下のデータを入力する。
伝票ヘッダ | |
得意先 | Customer01 |
請求書日付 | 2020/4/1 |
転記日付 | 2020/4/1 |
金額 | 10,800 |
通貨 | 会社コード通貨 |
税額計算 | ON |
税コード | [C5]課税売上8% |
明細 | |
G/L勘定 | [P00001]売上 |
D/C | 貸方 |
伝票通貨額 | 10,800 |
税コード | C5 |
利益センタ | PR01 |
- メニューバー>シミュレート(F9) で伝票を確認し、保存(転記)する。
得意先明細照会にて、登録した売掛金明細が表示されることを確認する。
- 会計管理>財務会計>債権管理>勘定コード>明細照会/変更(Tr-Cd:FBL5N)を選択する。
- 得意先コード「Customer01」、会社コードを入力して実行する。
- 先ほど登録した伝票が表示されていることを確認する。
消込転記により、先程登録した請求書に対して入金(消込)を行う。
- SAPメニュー>会計管理>財務会計>債権>伝票入力>入金(F-28)を選択する。
- 以下のデータを入力し、「未消込明細処理」ボタンを押下する。
転記日付 | 2020/4/1 |
伝票タイプ | DZ |
会社コード | 1000 |
転記日付 | 2020/4/1 |
通貨 | JPY |
銀行データ | |
勘定コード | ※預金勘定を作成のうえ、入力すること |
金額 | 10,800 |
未消込明細選択 | |
勘定コード | Customer01 |
- 先程登録した売掛金の明細のみを有効化し、転記(保存)する。
※現金割引がある場合は、この画面で現金割引額を入力する。
※操作方法が不明な場合は、以下を参照。
得意先明細照会にて、登録した売掛金明細が表示されないことを確認する。
- 会計管理>財務会計>債権管理>勘定コード>明細照会/変更(Tr-Cd:FBL5N)を選択する。
- 得意先コード「Customer01」、会社コードを入力して実行する。
- 先ほど登録した伝票が表示されないことを確認する。
理解を深めるために余力があれば、以下を確認しよう。
- 消込伝票の照会
- 伝票照会(Tr-Cd:FB03)で入金(消込)伝票を照会しよう。明細に売掛金の減少と預金の増加が確認できる。
- 消込伝票のテーブルデータを確認
- テーブルBSADの「消込伝票」に消込伝票の伝票番号を入力し、消込した売掛金明細が紐付けされていることを確認しよう。
- 消込された売掛金明細を確認
- 最初に登録した得意先請求書の売掛金明細を照会しよう。消込伝票欄から消込伝票の伝票番号が確認できる。
勘定消込(得意先消込):F-32
勘定消込の中でも得意先消込(Tr-Cd:F-32)を実施する。シナリオとして、一度販売したものを全額返品対応する想定で、SAPにて販売(得意先請求書)→返品(クレジットメモ)→販売と返品の紐付け(消込)を実施する。実施は次の手順で行う。
- 消込対象となる明細(得意先請求書、クレジットメモ)の登録:FB70、FB75
- 勘定消込前の状態を確認(得意先明細照会):FBL5N
- 勘定消込の実施:F-32
- 勘定消込後の状態を確認(得意先明細照会):FBL5N
まず、未消込明細を用意するために、得意先請求書を登録する。
- 会計管理>財務会計>債権管理>伝票入力>請求書(Enjoy)(Tr-Cd:FB70)を選択する。
- 以下のデータを入力する。
伝票ヘッダ | |
得意先 | Customer01 |
請求書日付 | 2020/4/1 |
転記日付 | 2020/4/1 |
金額 | 10,800 |
通貨 | 会社コード通貨 |
税額計算 | ON |
税コード | [C5]課税売上8% |
明細 | |
G/L勘定 | [P00001]売上 |
D/C | 貸方 |
伝票通貨額 | 10,800 |
税コード | C5 |
利益センタ | PR01 |
- メニューバー>シミュレート(F9) で伝票を確認し、保存(転記)する。
次に、返品を記録するためにクレジットメモを登録する。
- 会計管理>財務会計>債権管理>伝票入力>クレジットメモ(Enjoy)(Tr-Cd:FB75)を選択する。
- 以下のデータを入力する。
伝票ヘッダ | |
得意先 | Customer01 |
請求書日付 | 2020/4/1 |
転記日付 | 2020/4/1 |
金額 | 10,800 |
通貨 | 会社コード通貨 |
税額計算 | ON |
税コード | [C5]課税売上8% |
明細 | |
G/L勘定 | [P00001]売上 |
D/C | 借方 |
伝票通貨額 | 10,800 |
税コード | C5 |
利益センタ | PR01 |
- メニューバー>シミュレート(F9) で伝票を確認し、保存(転記)する。
得意先明細照会にて、登録した売掛金明細が表示されることを確認する。
- 会計管理>財務会計>債権管理>勘定コード>明細照会/変更(Tr-Cd:FBL5N)を選択する。
- 得意先コード「Customer01」、会社コードを入力して実行する。
- 先ほど登録した伝票が表示されていることを確認する。
勘定消込により、先程登録した請求書とクレジットメモの売掛金を消込する。
- SAPメニュー>会計管理>財務会計>債権管理>勘定コード>消込(Tr-Cd:F-32)を選択する。
- 得意先コード「Customer01」を入力し、「未消込明細処理」ボタンを押下する。
- 先程登録した売掛金に関する2明細のみを有効化し、転記(保存)する。
※操作方法が不明な場合は、こちらを参照。
得意先明細照会にて、登録した売掛金明細が表示されないことを確認する。
- 会計管理>財務会計>債権管理>勘定コード>明細照会/変更(Tr-Cd:FBL5N)を選択する。
- 得意先コード「Customer01」、会社コードを入力して実行する。
- 先ほど登録した伝票が表示されないことを確認する。
理解を深めるために余力があれば、以下を確認しよう。
- 消込伝票の照会
- 伝票照会(Tr-Cd:FB03)で入金(消込)伝票を照会し、明細がないことを確認しよう。
- 消込伝票のテーブルデータを確認
- テーブルBSADの「消込伝票」に消込伝票の伝票番号を入力し、消込した売掛金明細が紐付けされていることを確認しよう。
- 消込された売掛金明細を確認
- 最初に登録した得意先請求書の売掛金明細を照会しよう。消込伝票欄から消込伝票の伝票番号が確認できる。
テーブル
テーブルID | 内容説明 | 備考 |
---|---|---|
BKPF | 会計伝票ヘッダ情報 | |
BSEG | 会計伝票明細情報 | |
BSID | 会計管理:得意先の二次索引 | 未消込の得意先明細 |
BSAD | 会計管理:得意先の二次索引(決済明細) | 消込済みの得意先明細 |
BSIK | 会計管理:仕入先の二次索引 | 未消込の仕入先明細 |
BSAK | 会計管理:仕入先の二次索引(決済明細) | 消込済みの仕入先明細 |
BSIS | 会計管理:勘定コードの二次索引 | 未消込のG/L勘定明細 |
BSAS | 会計管理:勘定コードの二次索引(決済明細) | 消込済みのG/L勘定明細 |
T041A | 消込トランザクション | 勘定消込における設定を保持 |
T041T | 決済処理名 | 勘定消込における設定を保持 |
演習問題
※複数回答の設問あり。
※答えはドラッグすると見れる。
以下の文章について、正誤を答えよ。
未消込明細がある伝票をアーカイブできる。
A. 正
B. 誤
正解:B
消込済明細に含まれる情報は、以下のどれか。
A. 消込伝票番号
B. 支払期日
C. 消込日付
D. アーカイブ情報
正解:AC
自動消込プログラムを使用して、消込できるのは次のどれか。
A. 総勘定元帳勘定
B. 特殊仕訳コード
C. 通貨
D. 補助元帳勘定
正解:AD
以下の文章について、正誤を答えよ。
マニュアルで支払処理を実行する際、現金割引額の上書きが可能である。
A. 正
B. 誤
正解:A
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