【認定試験対策】財務会計(FI)9-3.パラレル会計-複数元帳アプローチ

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概要

パラレル会計、およびパラレル会計の一つ複数元帳アプローチについて解説する。

※パラレル会計については、前回の9-2.パラレル会計-複数勘定アプローチを参照。

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カスタマイズ、トランザクションコード

  • FB50 – G/L勘定伝票入力
  • FB50L – 元帳グループのG/L勘定伝票入力(Enjoy)
  • FB1SL – 元帳グループの勘定消込
  • FB05L – 元帳グループの消込転記
  • F13L – 元帳グループ固有の自動消込
  • FB03 – 伝票照会
  • S_ALR_87012284 – 財務諸表

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複数元帳アプローチ

今回も前回と同様、日本用(ローカル国用)とIFRS用(国際用)という前提で話をする。

複数元帳アプローチの基礎

複数元帳アプローチのポイントは、追加の元帳を登録し、ローカル用の元帳、国際用の元帳を用意するというものであった。伝票の保存先を分けてしまって、伝票はそれぞれの元帳に対して登録し、レポーティングは元帳を指定して実行する形である。

元帳について

元帳の特徴についても簡単におさらいしておこう。

  • リーディング元帳は、クライアントごとに一つだけ。
    →つまり、全社共通で利用する元帳である。
  • リーディング元帳は、COに連携できる唯一の元帳である。
    →追加した非リーディング元帳はCOに連携できない。

伝票入力について

伝票の登録方法は、評価差額(元帳ごとの金額差)がある/ないによって分けられる

評価差額がない伝票については、通常通りFB50などのトランザクションコードから登録する。このとき、リーディング元帳、非リーディング元帳の両方にまとめて転記される。

評価差額がある伝票については、FB50Lなどの専用のトランザクションコードから登録する。このとき、伝票に入力する金額が異なるため、元帳ごとにトランザクションを実行して伝票を登録する。

評価差額のない伝票の入力

前述のとおり、FB50などのトランザクションコードから登録すればよい。このとき、リーディング元帳、非リーディング元帳の両方にまとめて転記される。

また、すべての元帳で伝票の日付、金額、勘定、および伝票番号は同じになる。

評価差額のある伝票の入力

専用のトランザクションを利用する。たとえば、G/L勘定登録だとFB50LやFB01L。FB50との違いは、伝票入力項目に元帳が指定できる点。

  • 伝票入力時に元帳or元帳グループを指定する
    たとえば、日本用の元帳に対して伝票登録し、IFRS用の元帳に対して伝票登録するといったように複数回伝票登録する。
    ※なお、元帳or元帳グループを空欄にすると、すべての元帳に転記される。
     
  • 登録された伝票の伝票番号は、元帳ごとに異なる
    金額も当然ことなる。勘定については、同じ勘定コードを利用すればよい。
     
  • 元帳グループを使うことで、複数の元帳に同時転記が可能
    これは、元帳が3つ以上ある場合に有効な手法。元帳グループとは、元帳をグルーピングしたもの。元帳が0L、1L、2Lとあり、0Lと1Lに同じ内容を入力する場合は、0Lと1Lを同じ元帳グループに割当しておき、伝票入力時に元帳グループを入力することでまとめて入力できる。
    元帳グループの設定は、カスタマイズ【SPRO>財務会計>財務会計共通設定>元帳>元帳>定義: 元帳グループ】で行う。

評価差額のある勘定の消込管理

複数元帳アプローチで評価差額のある勘定を消込管理する方法について。

消込管理するためには、消込管理するG/L勘定コードのマスタで項目「元帳グループ固有消込」をONにすること。元帳グループ固有消込は、会社コードレベルの管理データ項目で用意されている。

なお、複数元帳が設定されていない会社コードでは、元帳グループ固有消込の項目が表示されないので注意。

 

消込についても、専用のトランザクションコードが用意されているので、以下に紹介する。なお、自動消込も可能である。

【G/Lの場合】

  • FB1SL:元帳グループの勘定消込
    SAPメニュー>会計管理>財務会計>総勘定元帳>勘定コード>消込 – 元帳グループ別
  • FB05L:元帳グループの消込転記
    SAPメニュー>会計管理>財務会計>総勘定元帳>勘定コード>消込による転記 – 元帳グループ別
  • F13L:元帳グループ固有の自動消込
    SAPメニュー>会計管理>財務会計>総勘定元帳>定期処理>G/L勘定 – 元帳グループ別

伝票の照会、レポートについて

伝票照会

伝票照会はFB03などのトランザクションを用いて実施する。

複数元帳に同時転記している場合は、最初にリーディング元帳(0L)が表示される。元帳を切り替えるには、「総勘定元帳ビュー」に切り替えたうえで「他元帳」をクリックすると表示が変わる。

レポート出力

レポート出力条件に元帳を指定する項目があるため、そこで出力したい元帳を指定する。

必要な設定まとめ

  • 追加の元帳(非リーディング元帳)の定義
    【SPRO>財務会計>財務会計共通設定>元帳>元帳>定義: 総勘定元帳】
    ※S/4の場合:「定義: 元帳および通貨タイプの設定」
     
  • 追加元帳の会社コードへの割当
    【SPRO>財務会計>財務会計共通設定>元帳>元帳>定義/有効化: 非リーディング元帳】
    ※S/4の場合:「定義: 元帳および通貨タイプの設定」画面から元帳を選択し、画面左の「元帳の会社コード設定」を選択する
     
  • 元帳グループの設定
    【SPRO>財務会計>財務会計共通設定>元帳>元帳>定義: 元帳グループ】
     
  • (消込管理する勘定の場合)G/L勘定コードの「元帳グループ固有消込」フラグON
    【FSS0やFS00から会社コードレベル>管理データタブ>元帳グループ固有消込】

補足:複数勘定アプローチとの違い

  • 元帳を分けることで評価差額を管理する(複数勘定アプローチは勘定で管理)
  • 評価差額のある金額を登録する場合も、使う勘定はお同じ
  • 同じ財務諸表バージョンを利用してレポート出力する

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カスタマイズ操作方法

複数元帳アプローチについての一通りの操作を実施する。

  • 複数元帳アプローチに伴う設定
  • 評価差額のない伝票の登録、照会
  • 評価差額のある伝票の登録、照会
  • レポート(財務諸表)の出力

複数元帳アプローチに伴う設定

本演習は、クライアントレベルでのカスタマイズが多く、設定の影響範囲が広い。そのため、設定を変更する場合は、影響範囲に問題がないことを確認してから実施すること。

以下の前提で設定を行う。

前提条件・要件
  • 日本用のリーディング元帳(0L)のみがある状態
  • IFRS用に非リーディング元帳(1L)を追加する

IFRS用の非リーディング元帳(1L)を追加する
  1. SPRO>財務会計>財務会計共通設定>元帳>元帳>定義: 総勘定元帳 を選択する。
    ※S/4の場合、「定義: 元帳および通貨タイプの設定」となっている。
  2. リーディング元帳(0L)が定義されていることを確認する。
  3. 「新規エントリ」ボタンをクリックし、以下のデータを入力して保存する。
元帳1L
元帳名IFRS元帳
LeadingOFF
元帳タイプ追加元帳
追加元帳タイプ追加元帳
基本元帳0L
マニュアル転記不可OFF

非リーディング元帳(1L)の会社コード割当
  1. SPRO>財務会計>財務会計共通設定>元帳>元帳>定義/有効化: 非リーディング元帳 を選択する。
    ※S/4の場合、「定義: 元帳および通貨タイプの設定」画面から元帳1Lを選択し、画面左の「元帳の会社コード設定」を選択する。
  2. 「新規エントリ」ボタンをクリックし、以下のデータを入力して保存する。
会社コード1000
国内通貨タイプ10
グループ通貨タイプ10

評価差額のない伝票の登録、照会

元帳ごとの金額差がない仕訳については、通常のトランザクションコードからすべての元帳に同時転記できる。

  1. SAPメニュー>会計管理>財務会計>総勘定元帳>伝票入力>G/L勘定伝票入力(Enjoy)(Tr-Cd:FB50)を起動する。
  2. 以下の仕訳をもつ伝票を登録する。
    ※会計伝票の登録方法がわからない場合:3-5.会計伝票の登録を参照
    ※G/L勘定コードの登録方法がわからない場合:2-1.G/L勘定(総勘定元帳勘定)を参照
消耗品費 / 小口現金
  1. 伝票照会(Tr-Cd:FB03)を起動し、登録した伝票を照会する。
  2. 「総勘定元帳ビュー」ボタンをクリックする。
    →初期表示で元帳0Lのデータが表示されていることを確認する。
     ※伝票明細の少し上に「元帳 0L」と記載されている。
  3. 「他元帳」ボタンをクリックする。
    →元帳1Lのデータが表示されることを確認する。
     ※「元帳 0L」の記載が「元帳 1L(元帳 0L に転記済)」に変わる
  4. 伝票の日付、金額、勘定、および伝票番号は同じであることを確認する。
  5. メニューバー>環境>伝票関連処理>会計伝票 を選択する。
    →(COと連携している場合、)元帳0Lのみ、管理会計伝票が同時登録されていることを確認する。

評価差額のある伝票の登録、照会

9-2.パラレル会計-複数勘定アプローチと同様、引当金を例に元帳ごとに金額差のある伝票を登録してみよう。

要件
  • 日本用(元帳0L):2,000円の退職給与引当金
  • IFRS用(元帳1L):1,000円の退職給与引当金
  • 勘定コード「退職給付費用」、「退職給与引当金」を登録しておく
    「退職給与引当金」については、項目:会社コードレベル>管理データタブ>元帳グループ固有消込 をONにする
    勘定コードは、元帳によらず同じ勘定コードを利用する
    ※G/L勘定コードの登録方法がわからない場合:2-1.G/L勘定(総勘定元帳勘定)を参照
  1. SAPメニュー>会計管理>財務会計>総勘定元帳>伝票入力>元帳グループのG/L勘定伝票入力(Enjoy)(Tr-Cd:FB50L)を起動する。
  2. 元帳に「0L」を指定して、以下の仕訳をもつ伝票を登録する。
    ※会計伝票の登録方法がわからない場合:3-5.会計伝票の登録を参照
日本用(0L)退職給付費用 2,000円 / 退職給付引当金 2,000
  1. 同様に、IFRS用の伝票を登録する。
    ※元帳に「1L」を指定する。
IFRS用(1L)退職給付費用 1,000円 / 退職給付引当金 1,000
  1. 伝票照会(Tr-Cd:FB03)を起動し、登録した伝票(日本用、IFRS用それぞれ)を照会する。
  2. 「総勘定元帳ビュー」ボタンをクリックし、以下を確認する。
    • 「他元帳」のボタンが表示されない。(単一の元帳にのみ登録しているため)
    • 伝票番号が異なる。(別々の伝票番号で登録されている)
    • 同じ勘定コードで登録されている。
    • 金額が以下のとおりに登録されている。
日本用(0L)退職給付費用 2,000円 / 退職給付引当金 2,000
IFRS用(1L)退職給付費用 1,000円 / 退職給付引当金 1,000
  1. メニューバー>環境>伝票関連処理>会計伝票 を選択する。
    →(COと連携している場合、)元帳0Lのみ、管理会計伝票が同時登録されていることを確認する。

また、未消込明細の金額が元帳0Lと1Lでそれぞれ管理されていることを確認する。

  1. SAPメニュー>会計管理>財務会計>総勘定元帳>勘定コード>明細の照会/更新(新)(Tr-Cd:FAGLL03)を起動する。
  2. 勘定コードに退職給与引当金の勘定コード、元帳に「0L」を指定して、実行する。
    →未消込の退職給付引当金が、2,000円であることを確認する。
  3. 前画面に戻り、元帳に「1L」を指定して、実行する。
    →未消込の退職給付引当金が、1,000円であることを確認する。

レポート(財務諸表)の出力

  1. SAPメニュー>会計管理>財務会計>総勘定元帳>情報管理>総勘定元帳レポート>財務諸表/キャッシュフロー>一般>実績/実績比較>財務諸表: 実績/実績比較(S_PLO_86000028)(Tr-Cd:S_ALR_87012284)を起動する。
  2. 以下のデータを入力して、実行する。
通貨タイプ10
会社コード1000
元帳0L
レポート年度2020
レポート期間開始01
レポート期間終了12
比較年度2019
比較期間開始01
比較期間終了12
出力タイプ標準ドリルダウンレポート
  1. 退職給付費用、退職給付引当金の金額が、2,000円になっていることを確認する。
  2. 前画面に戻り、元帳に「1L」を入力して、実行する。
  3. 退職給付費用、退職給付引当金の金額が、1,000円になっていることを確認する。

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テーブル

テーブルID内容説明備考
SKA1G/L 勘定マスタ勘定コード表レベルのデータを保持
SKB1勘定コードマスタ (会社コード)会社コードレベルのデータを保持
FINSC_LEDGER元帳のデータを保持
FINSC_LD_CMP元帳の会社コード割当データを保持
※「定義: 元帳および通貨タイプの設定」の内容

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演習問題

※複数回答の設問あり。
※答えはドラッグすると見れる。

次の文章について、正誤を答えよ。

複数元帳アプローチの評価差額のある勘定の登録において、元帳グループを使用することで一度に伝票登録できる。

A. 正
B. 誤

正解:B

元帳グループを利用することで複数元帳まとめて伝票登録できる。ただし、まとめて登録した伝票の金額はすべて同じになるため、評価差額がある場合は個別に伝票登録するしかない。

消込管理する勘定の転記に失敗した。どの設定を見直すべきか。

A. 定義: 消込管理 の設定
B. G/L勘定コードマスタの元帳グループ固有消込フラグ
C. 伝票タイプの消込転記可能フラグ
D. 転記キーの消込転記可能フラグ

正解:B

次の文章について、正誤を答えよ。

複数元帳アプローチを利用する場合、財務諸表バージョンを新たに作成し、出力する元帳に応じて使い分ける運用が一般的である。

A. 正
B. 誤

正解:B

コメント

  1. 金井 より:

    コメント失礼します。
    いつも拝見してSAPの勉強をさせていただいております。ありがとうございます。

    2点質問させてください。

    リーディング元帳は、COに連携できる唯一の元帳である。
    →追加した非リーディング元帳はCOに連携できない。

    上記はS/4においても同様でしょうか。オンプレだけの使用でしょうか。クラウド版での変更有無についてご存じでしたらご教示いただきたいです。

    また、CO連携出来ないとして、デフォルトで出来ないだけなのか、追加開発等をしてもCO連携は不可なのかご教示いただきたいです。

    お忙しいところ大変恐縮ですが、ご教示のほどどうぞよろしくお願いいたします。

    金井

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