概要
決算におけるSAPでの処理について解説する。
また、SAPで出力する財務諸表、およびその設定となる財務諸表バージョンについて解説する。
カスタマイズ、トランザクションコード
- S_ALR_87012284 – 財務諸表
決算処理
FIの話なので、経理業務を前提に話をするが、企業では各月に月次決算、年度末には年次決算を行う。細かい業務の話は割愛するが、要は各月、年度のまとめを行う。たとえば、未処理だった経費を精算したり、各月の損益を確定させたりする。
SAPでも、そのような業務に応じて様々な処理が必要になる。各月の決算処理を月次決算処理(年12回)、年度末の決算処理を年次決算処理(年1回)と呼ぶ。
- 月次決算処理:各会計期間で発生した金額を確定するための処理
- 年次決算処理:月次決算処理 + α(※α:財務諸表を出力するための処理)
月次決算処理
SAPで実施する月次決算処理の一部を紹介する。流し読みで構わない。
※締める月を「当月」、その翌月を「翌月」と記載する。
- 翌月の会計期間をオープンする。当月の会計期間をクローズする。
- 債権管理で見越/繰延の入力、貸倒費用の入力をする。
- 外貨での未消込明細を評価する。
- (MMでは、)入庫/請求仮勘定を更新し、品目再評価を転記する。
- etc…
年次決算処理
SAPで実施する年次決算処理の一部を紹介する。流し読みで構わない。
※月次処理でも行うものは省き、年次のみ行うもののみ記載。
- 翌月(翌年度)の会計期間をオープンする。当月(当年度)の会計期間をクローズする。
- 残高繰越を実施する。
- etc…
財務諸表
財務諸表レポート
SAPでは、財務諸表を登録するための標準レポート(プログラムID:RFBILAOO、Tr-Cd:S_ALR_87012284)が用意されている。
この財務諸表のレイアウトを決めているのが、財務諸表バージョンである。
図は、貸借対照表だが損益計算書も出力できる。
財務諸表バージョン
財務諸表バージョンは、財務諸表を出力する際のレイアウト(科目の並び順、名称など)を決めている。一応、日本用のサンプルレイアウト:BAJP、FSJPが用意されている。
- レポートの出力条件を使用することで、事業領域ごとの財務諸表を出力することが可能。他にも会社コード、セグメント、利益センタなどの切り口で出力することもできる。
- 階層レベルは最大20まで:「資産>流動資産>…」と階層化できるのは、最大20まで。
- 明細の前後に、任意のテキスト(4行分まで)が記述できる
- 同じ科目でも借方/貸方のどちらに残高があるかで、財務諸表の出力場所を変えられる。(残高に基づく勘定グループ割当という)
合計値の算出について
財務諸表バージョンの合計値の設定が、画面を見ただけでは分かりづらいので解説する。「合計表示」の項目が2つあるが、上の項目は明細内の合計値を算出するもの、下の項目は前の合計値と明細内の合計値を足したものである。下の項目は営業利益(売上総利益 – 営業内費用)の算出などに利用する。
カスタマイズ操作方法
新しく財務諸表バージョンを登録し、登録した財務諸表バージョンでレポートを出力する。
- 財務諸表バージョンの登録
- 財務諸表バージョンの新規登録(既存の財務諸表バージョンをコピーして作成する)
- 未割当のG/L勘定コードの確認
- 財務諸表バージョンの明細登録(旅費を追加で表示するように設定する)
- 財務諸表バージョンの勘定割当(旅費を追加で表示するように設定する)
- 明細の移動(追加した旅費の表示順序を調整する)
- 登録した財務諸表バージョンでレポートを出力する
財務諸表バージョンの登録
財務諸表バージョンの新規登録
- SPRO>財務会計>総勘定元帳>定期処理>伝票>定義: 財務諸表バージョン を起動する。
- 財務諸表バージョン「BAJP」を選択する。
- メニューバー>編集>別名コピー をクリックする。
- 財務諸表バージョンに「1000」、名称(任意)、勘定コード表に「1000」を入力して、保存する。
- 登録した財務諸表バージョン「1000」をダブルクリックし、言語がJA[日本語]になっていることを確認する。(日本語でない場合は、日本語に変更する。)
未割当のG/L勘定コードの確認
勘定コード表と会社コードで使用するすべてのG/L勘定コードが、財務諸表バージョンに割当されているか確認する。
- 引き続き、財務諸表バージョンのカスタマイズ画面で登録した財務諸表バージョンをダブルクリックする。
- 「B/S P/L項目」ボタン、もしくは Shift + F8 を押下する。
※SAPのバージョンによっては、「連結勘定科目」と表記されている。 - メニューバー>構造>チェック を選択する。
- 会社コード「1000」を入力し、「未割当の勘定コード区分」のみONにして実行する。
→割当されていないG/L勘定コードが表示される。 - Enterを押下し、ポップアップを閉じる。
財務諸表バージョンの明細登録
今回は、販管費の並びに旅費を追加する。まずは、旅費の階層を追加し、その後勘定の割当、表示位置の調整を行う。
- 引き続き、財務諸表バージョンのカスタマイズ画面でツリーを展開する。
50000000[損益計算の部]>営業利益/営業損失>販管費および一般管理費 を選択(クリック)する。 - 「明細登録」ボタンをクリックする。
- 52100000[販管費および一般管理費]の配下に、52190000[旅費]を追加する。
財務諸表バージョンの勘定割当
- 引き続き、財務諸表バージョンのカスタマイズ画面で、登録した「52190000[旅費]」を選択(クリック)する。
- 「勘定割当」ボタン、もしくはダブルクリックする。
- 以下のデータ入力し、Enterを押下する。
開始勘定 | 旅費のG/L勘定コードを入力 ※G/L勘定コードが未登録の場合、2-1.G/L勘定(総勘定元帳勘定)を参考に登録 |
D(借方) | ON |
C(貸方) | ON |
明細の移動
追加した旅費を「その他」の下に移動する。
- 引き続き、財務諸表バージョンのカスタマイズ画面で、登録した「52190000[旅費]」を選択(クリック)する。
- メニューバー>編集>+/- 選択 をクリックする。
→「52190000[旅費]」が黄色くハイライトされる。 - 「52180000[その他]」を選択(クリック)し、メニューバー>編集>再割当 をクリックする。
→ポップアップが表示される。 - 「同一レベル」をONにし、Enterを押下する。
→「52180000[その他]」の下に「52190000[旅費]」が移動する。 - 保存する。
登録した財務諸表バージョンでレポートを出力する
- SAPメニュー>会計管理>財務会計>総勘定元帳>情報管理>総勘定元帳レポート>財務諸表/キャッシュフロー>一般>実績/実績比較>財務諸表(Tr-Cd:S_ALR_87012284)を起動する。
- 以下のデータを入力して、実行する。
通貨タイプ | 10 |
会社コード | 1000 |
財務諸表バージョン | 1000 |
元帳 | 0L |
レポート年度 | 2020 |
レポート期間開始 | 01 |
レポート期間終了 | 12 |
比較年度 | 2019 |
比較期間開始 | 01 |
比較期間終了 | 12 |
出力タイプ | 従来形式による一覧 |
テーブル
テーブルID | 内容説明 | 備考 |
---|---|---|
T011 | 財務諸表バージョン | 財務諸表バージョンのデータを保持 |
T854 | 連結勘定科目番号 | 明細(階層)のデータを保持 |
T854S | 連結勘定科目定義 | 明細の中身のG/L勘定コード |
演習問題
※複数回答の設問あり。
※答えはドラッグすると見れる。
SAP標準の財務諸表の出力は、どのレベルで行うことができるか。
A. クライアントレベル
B. 事業領域レベル
C. 会社コードレベル
D. 利益センタレベル
正解:BCD
財務諸表バージョンの階層は、最大何レベルまで設定できるか。
A. 10
B. 20
C. 99
D. 100
正解:B
財務諸表のレポートにおいて、勘定の残高によって表示位置を代えたい。どのように財務諸表バージョンを設定すべきか。
A. G/L勘定コードの割当で、「+」で合計するか「-」で合計するか設定する
B. 借方表示する位置にG/L勘定コードの割当で、D(借方)のみONにする
C. 貸方表示する位置にG/L勘定コードの割当で、C(貸方)のみONにする
D. 借方貸方に関係なくG/L勘定コードの割当で、D(借方)、C(貸方)両方ONにする
正解:BC
次の文章について、正誤を答えよ。
SAP標準の財務諸表レポートを利用して、損益計算書を出力したい。財務諸表バージョンの設定で、「合計表示」をONにすると合計値が算出できる。
A. 正
B. 誤
正解:A
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