概要
SAPで臨時償却を登録する際のポイントを解説する。
カスタマイズ、トランザクションコード
- OABU – 設定: 償却領域(臨時償却)
- AO95 – 設定: 勘定(臨時償却)
- ABAA – 臨時償却 入力
- AFAB – 償却記帳
臨時償却
臨時償却は、事故による固定資産の破損など、通常の運用に伴う償却費以外の償却費を指す。SAPで臨時償却を登録する際のポイントを解説する。
臨時償却の登録について
臨時償却の登録におけるポイントは、以下のとおり。
マニュアルで減価償却を登録する
通常償却は、償却キーや耐用年数によって予定償却費が計算され、償却記帳プログラムによってFI伝票が登録された。つまり自動で金額がシステムで計算されていた。臨時償却では、償却の金額を手入力する。
償却領域ごとに臨時償却ができるかどうかを決める
カスタマイズにて、償却領域ごとに臨時償却が可能かどうかを制御している。
前回の10-8.固定資産-減価償却-の触れているので、思い出していただきたい。
【再掲】償却タイプ
償却タイプとは、償却費の種類のこと。次の4種類が存在する。通常償却と臨時償却を押さえておけばよい。
- 通常償却
通常の消耗に起因する償却費。月々に発生する減価償却費を指す。 - 特別償却
国で認められている特別償却の償却費。通常の償却費に加え、資産価額に対して一定の割合で償却する。 - 臨時償却
資産の破損など、通常の消耗と異なる価値の減少。資産の価額が恒久的に減少する場合に利用する。 - 生産高比例償却
生産高比例法に伴う償却費。たとえば機械の生産数に応じて償却する場合に利用する。
償却領域ごとにどの償却タイプの償却費を計上できるか、カスタマイズで制御している。
【カスタマイズ】
・通常償却:「設定: 償却領域(Tr-Cd:OABN)」
・特別償却:「設定: 償却領域(Tr-Cd:OABS)」
・臨時償却:「設定: 償却領域(Tr-Cd:OABU)」
償却領域ごとに異なる償却費を入力可能
臨時償却は、償却領域ごとに異なる金額を入力できる。たとえば、帳簿価額には臨時償却1,000円を入力し、税務用には0円といった入力を行う。
償却記帳プログラムの実行によりFI伝票が作成される
臨時償却は、通常償却と同様、取引入力のタイミングではFI伝票登録はされない。取引入力時は、あくまで予定値(計画値)として登録され、償却記帳によってFI伝票が登録される。
カスタマイズ操作方法
今回の演習では、[01]帳簿償却の償却領域にのみ臨時償却を登録する。
なお、演習における資産マスタの前提は以下とする。
事前確認、設定:OABU、AO95
臨時償却を実施する資産に対して、カスタマイズ、各種設定を確認する。
- SPRO>財務会計>固定資産管理>減価償却>臨時償却>設定: 償却領域(Tr-Cd:OABU)を起動する。
- [01]帳簿価額の臨時償却をONにして、保存する。
- SPRO>財務会計>固定資産管理>減価償却>臨時償却>設定: 勘定(Tr-Cd:AO95)を起動する。
- 勘定設定「[Z100]機械」を選択し、以下の勘定を設定して、保存する。
- 臨時原価の減価償却累計額勘定:機械装置償却累計
- 臨時償却の費用勘定:減価償却費
臨時償却の登録:ABAA
臨時償却を登録する。
- SAPメニュー>会計管理>財務会計>固定資産管理>記帳>マニュアル価格修正>臨時償却(Tr-Cd:ABAA)を起動する。
- 「臨時償却確認用資産」の資産番号を入力し、Enterを押下する。
- 以下のデータを入力し、Enterを押下する。
伝票日付 | 2000/05/01 |
転記日付 | 2000/05/01 |
資産評価日 | 2000/05/01 |
記帳額 | 1,000 |
- 「領域選択」ボタンをクリックし、[01]帳簿償却のみONにする。
- 保存(転記)する。
償却記帳の前に、資産の状況を確認しておく。
- 資産エクスプローラ(Tr-Cd:AW01N)にて、資産を確認する。
→「計画価額」タブで臨時償却が「1,000(円)」であることを確認する。 - 臨時償却は計画値であり、FI伝票は登録されていないことを確認する。
→取引欄の臨時償却をダブルクリックして、FI伝票に画面遷移しないことを確認する。 - 「記帳額」タブをクリックする。
→臨時償却が「0(円)」であることを確認する。
画面下部の償却費のステータスが計画済(つまり未転記)であることを確認する。
償却記帳の実施:AFAB
償却記帳の実施(FI伝票の転記)を行う。
- SAPメニュー>会計管理>財務会計>固定資産管理>償却記帳>実行(Tr-Cd:AFAB)を起動する。
- 以下のデータを入力し、テスト実行する。
会社コード | 1000 |
会計年度 | 2000 |
会計期間 | 2 |
テスト実行 | ON |
資産 | (「臨時償却確認用資産」の資産番号) |
- 臨時償却が1,000円分処理されていることを確認する。
- 前画面に戻り、テスト実行をOFF、資産を空白にし、バックグラウンド実行する。
- ジョブ確認(Tr-Cd:SM37)で、ジョブを確認し、伝票番号を確認する。
- 伝票照会(Tr-Cd:FB03)などで伝票を照会する。
→減価償却費/機械装置償却累計 の仕訳が登録されていることを確認する。 - メニューバー>伝票関連処理>会計伝票 を選択する。
→管理会計伝票が登録されていることを確認する。 - 資産エクスプローラ(Tr-Cd:AW01N)にて、資産を照会する。
- 「記帳額」タブをクリックする。
→臨時償却が「1,000(円)」であることを確認する。
画面下部の償却費のステータスが、2期で転記済であることを確認する。 - 画面左の[15]税務の償却領域をダブルクリックする。
→[15]税務では、臨時償却が登録、転記されていないことを確認する。 - 再度、画面左の[01]帳簿償却をダブルクリックし、転記済の2期をダブルクリックする。
→償却記帳のログ画面に遷移することを確認する。
テーブル
テーブルID | 内容説明 | 備考 |
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