概要
新総勘定元帳の基本設定について解説する。
カスタマイズ、トランザクションコード
※SPROからのカスタマイズのみ。
新総勘定元帳について
総勘定元帳とは
総勘定元帳とは、すべての取引を勘定科目ごとに記録していく帳簿である。一方、仕訳帳はすべての取引を日付順に記録する帳簿である。
SAPではこの総勘定元帳を、システム的に満たすために用意した機能を「総勘定元帳(以後、GLと記載することもある)」と呼んでいる。財務会計における一つの領域になる。
そのため、マスタとしては勘定コードなどを設定する。トランザクションデータとしては、各勘定ごとのお金のやりとりした情報を保持している。
SAPでは「総勘定元帳」を業務的な総勘定元帳(ここでは「総勘定元帳(台帳)」と記載する)と同じ意味で話すこともあるが、SAPの領域としての「総勘定元帳」と話すこともある(システム的な意味合いが強い)。台帳を実現するための領域が「総勘定元帳」領域であるため、混同して理解しても概ね問題ないが、細かなニュアンスを理解するうえでは、どちらの話をしているか捉えたうえで読み進めていただきたい。本文では、SAPの領域としての「総勘定元帳」という意味合いで話を進めていく。
従来(旧)の総勘定元帳と新総勘定元帳
「新」とついているだけあって、新総勘定元帳は新しくリニューアルされた総勘定元帳という機能である。旧と新の違いは次のとおり。
- 従来の総勘定元帳(Classic GL)
- クライアントに総勘定元帳が一つのみ存在
- 新総勘定元帳(New GL)
- クライアントに複数の総勘定元帳を設定することができる
なお、新総勘定元帳はSPRO>財務会計>財務会計共通設定>有効化: 新総勘定元帳 にて有効化できる。すでに有効化済みの場合は、該当のカスタマイズが表示されなかった気がする。
リーディング元帳、非リーディング元帳
ネーミングセンスの悪さがSAPのわかりにくさを助長しているが、頑張って理解してほしい。私も尽力する。
元帳について
まず元帳の概念から説明する。
SAPの財務会計ではデータを管理する箱を「元帳」と呼んでいる。ひとまずは、Excelで管理された台帳(仕訳のやり取りが乗っている一覧)をイメージしてもらえばいい。A社の台帳、B社の台帳という感覚でA社に設定している元帳、B社に設定している元帳、というように設定していく。
また、「元帳」には色々な種類がある。SAPでは色々なところで「元帳」というワードが出てくるが、それぞれで表しているものが違うので、戸惑ったらここに立ち返ればいい。
リーディング元帳、非リーディング元帳
元帳の種類分けの一つが、リーディング元帳か否か。リーディング元帳を簡単に説明すると、全社共通の元帳、かつCOに連携している元帳である。
リーディング元帳 | ・クライアントに一つのみ存在する。つまり、クライアントにあるすべての会社コードが、同じリーディング元帳を使用する。 ・COに連携している総勘定元帳。リーディング元帳のデータのみが、COに自動で連携できる。 |
非リーディング元帳 | リーディング元帳以外を指す。 ・使用する場合は、会社コードごとに「有効化」が必要。 ・COにデータを連携することができない。 |
使い道は、複数のレポーティングが必要かどうか。
たとえば、グローバルに展開している企業で、日本とアメリカに会社があったとする。日本の会社では国際会計基準(IFRS)に沿ったレポートと、日本の会計基準に沿ったレポートを提出する。アメリカの会社は、アメリカとIFRSのレポートを提出する。このとき、リーディング元帳をIFRS用とし、非リーディング元帳に日本用、アメリカ用、とそれぞれ用意するわけである。
そうすることで、IFRS用のレポートはリーディング元帳からデータを抽出、日本用のレポートは非リーディング元帳(日本用)からデータを抽出すればいいよね、という話。
リーディング元帳は標準で用意されており、「0L」というコードになっている。
パラレル会計について
リーディング元帳、非リーディング元帳とセットで理解しておくべきものが、このパラレル会計。簡単に言うと、複数のレポーティングを行うことである。先ほどのリーディング元帳、非リーディング元帳のように複数の要件に応じてレポートすることを指す。
パラレル会計を実現する方法が2つある。
複数元帳アプローチ | 【説明】 前述のリーディング元帳、非リーディング元帳のように、データを保存する元帳を分けることで実現する方法。 たとえば、売上原価をIFRS用の元帳には500円、日本用の元帳には400円と登録し、レポート出力時に元帳を指定して出力するイメージ。 【違い】 レポートの設定がシンプルである。また、台帳にあるデータが少ないので、データ出力が早いのではないだろうか。ただし、データ量は増える。 |
複数勘定アプローチ | 【説明】 勘定を分けることで複数のレポーティングに対応する方法。データを登録する箱(元帳)は一つにしておき、IFRS用の勘定コード、日本用の勘定コードをそれぞれ用意する。伝票情報を登録する際は、勘定を分けて登録する。 たとえば、売上原価(IFRS)、売上原価(日本)という勘定コードをそれぞれ設定しておき、売上原価(IFRS)には500円、売上原価(日本)には400円を登録する。レポート出力時は、勘定コードを指定して出力するイメージ。 【違い】 レポートの設定が複雑になる。また、台帳に複数勘定分のデータがあるため、複数元帳アプローチに比べてデータ出力が遅いのではないだろうか。ただし、データ量は減る。 |
シナリオについて
会社コード以外の切り口でレポートを出力する際に使用する。
たとえば、事業領域ごとにレポートを出力したい場合は、シナリオ「事業領域」を総勘定元帳に対して割当する。
カスタマイズ操作方法
総勘定元帳の基本設定の確認
- SPRO>財務会計(新規)>財務会計共通設定(新)>元帳>元帳>定義総勘定元帳の元帳 を選択する。
※S4の場合:SPRO>財務会計(新規)>財務会計共通設定(新)>元帳>元帳>定義: 元帳および通貨タイプの設定
リーディング元帳「0L」に割当されているシナリオの確認
- SPRO>財務会計(新規)>財務会計共通設定(新)>元帳>元帳>割当: シナリオおよびユーザ定義項目→元帳 を選択する。
※S4の場合:SPRO>財務会計(新規)>財務会計共通設定(新)>元帳>元帳>定義: 元帳および通貨タイプの設定 - 元帳「0L」を選択する。
※S4の場合:元帳>元帳の会社コード設定>元帳および会社コードの会計原則 と遷移する。 - 画面左のペインで「シナリオ」をダブルクリックする。
非リーディング元帳の有効化
- SPRO>財務会計(新規)>財務会計共通設定(新)>元帳>元帳>定義/有効化: 非リーディング元帳 を選択する。
※S4の場合:SPRO>財務会計(新規)>財務会計共通設定(新)>元帳>元帳>定義: 元帳および通貨タイプの設定 - 有効化する元帳を選択する。
※S/4の場合:元帳>元帳の会社コード設定 にて会社コードのエントリを登録する。
テーブル
テーブルID | 内容説明 | 備考 |
---|---|---|
FAGL_LEDGER_SCEN | 元帳の有効シナリオ | 有効化されているシナリオを保持 |
演習問題
※複数回答の設問あり。
※答えはドラッグすると見れる。
SAP標準で用意されているリーディング元帳は、次のどれか。
A. 0L
B. 1L
C. 0M
D. 1M
正解:A
リーディング元帳は、一つのクライアントに複数登録することができるか。
A. 可能
B. 不可能
正解:B
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