概要
管理会計の基本となるマスタ、組織ユニットについて解説する。
カスタマイズ、トランザクションコード
- OX06 – 更新: 管理領域
- OKKP – 更新: 管理領域
- OX19 – 割当: 会社コード→管理領域
管理会計の全体像
管理会計の位置づけ
まずは、SAPにおける管理会計の位置づけをリンク先の画像で確認して欲しい。
管理会計では、経営層が意思決定するためのデータを管理している。どの事業所がどれくらい利益を出しているのか、どの製品が売れているのか、削減できるコストはないか、製品の原価はいくらか、といった情報をメインに取り扱う。
財務会計では、社外向けの情報(財務諸表など)を取り扱っていたのに対し、管理会計では社内向けの情報(事業所ごとの利益、原価管理など)を取り扱っている。
管理会計のモジュール
管理会計のモジュールは、以下のように分類される。
- 原価センタ会計(CO-CCA)
- 組織内の費用を管理する。次の内部指図会計とまとめて、間接費管理(CO-OM)と呼ぶこともある。いずれも間接費を集計し、各部門へ配賦するために利用する。
- 内部指図会計(CO-OPA)
- 内部指図は、管理会計におけるコストオブジェクトの一つ。例えば、内部指図を生産工程とみなし、工程ごとの費用を計上する。
- 製品原価管理(CO-PC)
- 直接費を管理、集計し、製造原価を計算する。
- 利益センタ会計(CO-PCA)
- 組織内の利益(収益と費用)を管理する。原価センタ会計とは異なり、費用だけでなく収益も管理するため、利益責任をもつ組織単位に利用する。
- 収益性分析(CO-PA)
- 「各年の店舗、製品ごと売上」のといったように、特定のメッシュ(市場セグメントという)を定義し、そのメッシュごとの損益を管理する。
S/4以降の変更点:ACDOCA
R/3からS/4への変更点として、ACDOCA(ユニバーサルジャーナル)というテーブルが登場している。ACDOCAは、R/3の会計伝票テーブル(BKPF、BSEG)が合体したようなテーブルである。加えてそれだけでなく、管理会計伝票(COBK、COEP)や利益センタ伝票(GLPCA)も合体したようなテーブルになっている。
これまで、別々のテーブルで見ていたものが、ひとつのテーブルに集約されている。これにより、トランザクションデータの登録処理や、照会も同じ機能に集約されている。これをSAPでは「統合」と呼んでいる。R/3とS/4では、見るテーブルや使うトランザクションコードが変わってくるので注意しておこう。
管理領域、組織ユニット
組織ユニットの全体像
- 分析対象
- 主に収益性分析で利用する組織単位。
- 管理領域
- 管理会計におけるもっとも重要な組織単位。原価と収益の管理し、原価計算の単位を表す。また、1つの管理領域に複数の会社コードを割り当てることができる。
- 会社コード
- 主に財務会計で利用する組織単位。いわゆる「会社」。子会社をもつ企業であれば会社単位で会社コードを設定する。※参考:財務会計(FI)1-1.会社コード、組織ユニット
- プラント
- 主にロジスティクス側で利用する組織単位。ひとまずは「工場」と捉えてもらってよい。
- セグメント
- 外部レポート用に財務諸表を登録することができる会社の部門。 国際会計原則により、企業はセグメントレポートの実行を義務付けられている。SAPの収益性分析では、しばしば「市場セグメント(収益性分析で利用するメッシュのこと)」というワードが出てくるが、これとは別物であるので注意。※参考:財務会計(FI)2-4.セグメント、利益センタ、原価センタ
- 利益センタ
- 会社内の原価と収益に関与する。利益を内部的に分析することができる。※参考:管理会計(CO)5-2.利益センタ、利益センタグループ、標準階層
- 原価センタ
- 費用を溜める箱。費用を溜める単位(総務部、経理部など)で作成する。※参考:管理会計(CO)1-2.原価センタ、原価センタグループ、標準階層
管理領域
管理会計におけるもっとも重要な組織単位。
管理領域は、原価と収益の管理や割当可能な独立した組織構造。原価計算の単位を表す。また、1つの管理領域に複数の会社コードを割り当てることができる。これにより、割り当てられた複数の会社コード間の原価計算が可能になる。ただし、同じ管理領域に複数の会社コードを割り当てる場合は、割り当てるすべての会社コードで、同じ勘定コード表および同じ会計年度バリアントを使用している必要がある。
会社コードを跨ったレポーティングが必要であったり、複数の会社コードを跨った利益センタを設定したりしない限り、管理領域と会社コードは1:1で紐付けする。
※会社コードについては、財務会計(FI)1-1.会社コード、組織ユニットを参照。
通貨コードの設定
管理領域:会社コードを1:1で紐付けする場合
- 管理領域通貨:管理領域内で利用する通貨。会社コード通貨と同一になる。
- 対象通貨:管理会計内の勘定割当対象ごとに定義する。
- 取引通貨:伝票の通貨。
管理領域:会社コードを1:Nで紐付けする場合
- 管理領域通貨:管理領域内で利用する通貨。紐付けする会社コードの会社コード通貨どれか1つと同じになる。
- 会社コード通貨:割当した会社コードの通貨コードが同じでない場合、勘定割当対象の対象通貨は自動的に会社コード通貨になる。
- 取引通貨:伝票の通貨。
管理領域の設定項目
主な設定項目は、以下の通り。
設定項目 | 備考 |
---|---|
会社コードとの紐付き | 以下のいずれかを選択。 ・管理領域と会社コードが同一:管理領域と会社コードが1:1 ・会社コード間原価計算:管理領域に複数の会社コードを割当する場合に利用 |
通貨タイプ | どの通貨を管理領域通貨として利用するかを選択。 [10]会社コード通貨、など |
通貨コード | JPY、など |
勘定コード表 | ※参考:財務会計(FI)2-1.G/L勘定(総勘定元帳勘定) |
会計年度バリアント | ※参考:財務会計(FI)1-3.会計年度バリアント |
原価センタ標準階層 | 管理領域で利用する原価センタの標準階層を指定 |
カスタマイズ操作方法
管理領域の登録・設定と、会社コードの割当を行う。
管理領域の登録:OX06
- SPRO>企業構造>定義>管理会計>更新: 管理領域(Tr-Cd:OX06)を起動する。
- 「更新: 管理領域」を選択する。
※「管理領域のコピー、削除、チェック」を利用すると、既存の管理領域をコピーできる。このとき、管理領域に紐づく設定(会社コードの割当)などもコピーされる。 - 「新規エントリ」から管理領域を登録する。
管理領域の設定:OKKP
- SPRO>管理会計>管理会計一般>組織>更新: 管理領域(Tr-Cd:OKKP)を起動する。
- 「更新: 管理領域」を選択する。
- 管理領域「1000」をダブルクリックする。
- 以下のデータを入力して、保存する。
割当管理 | |
CoCd->管理領域 | 管理領域と会社コードが同一 |
通貨設定 | |
通貨タイプ | [10]会社コード通貨 |
通貨コード | JPY |
その他の設定 | |
勘定コード表 | JP01 ※参考:財務会計(FI)2-1.G/L勘定(総勘定元帳勘定) |
会計年度バリアント | ※参考:財務会計(FI)1-3.会計年度バリアント |
原価センタ標準階層 | 1000 |
会社コードの割当:OKKP
- SPRO>管理会計>管理会計一般>組織>更新: 管理領域(Tr-Cd:OKKP)を起動する。
※SPRO>企業構造>割当>管理会計>割当: 会社コード→管理領域(Tr-Cd:OX19)でも可能。 - 「更新: 管理領域」を選択する。
- 管理領域「1000」を選択し、画面左の会社コードの割当 ダブルクリックする。
- 「新規エントリ」から会社コード「1000」を入力して、保存する。
テーブル
テーブルID | 内容説明 | 備考 |
---|---|---|
T001 | 会社コード | |
TKA01 | 管理領域 | |
TKA02 | 管理領域割当 | |
TKEB | 分析対象の管理(クライアント依存) | |
TKEBB | 分析対象の管理(クライアント非依存) | |
FAGL_SEGM | セグメントのマスタデータ | |
CSKS | 原価センタマスタ |
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