【認定試験対策】財務会計(FI)10-1.固定資産-組織構造-

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概要

本ページ以降は、固定資産管理についての解説が続く。初回は、固定資産管理を利用するために必要な組織構造マスタ(会社コード、勘定コード表、償却表)について解説する。

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カスタマイズ、トランザクションコード

  • EC08 – コピー: 参照償却表/償却領域
  • OAOB – 割当: 償却表→会社コード
  • OADB – 定義: 償却領域
  • OAYN – 定義: 資産レポートの財務諸表バージョン
  • OAYH – 定義: 外貨の償却領域

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固定資産管理

財務会計における固定資産管理の位置づけ

財務会計の主要モジュールは、以下のとおり。

  • GL:総勘定元帳
  • AR:債権管理
  • AP:債務管理
  • AA:固定資産管理
  • BL:銀行管理

※SAPの全体像として参考になりそうなリンクを貼っておく。

SAP ERPシステムのデータモデル
このトピックでは、SAP ERPシステムのデータモデルを取り上げて説明します。特徴SAP ECCシステムは、企業で行う基幹業務のすべてを発生ベース(伝票処理)で1つのデータベース(大福帳型データベース)に一元管理する設計により、基幹業務全体を統合的に管理します。特に、受注・販売・生産などの業務における個別処理が、入力時...

固定資産の種類

SAPで扱う固定資産とは、以下のものを指す。

  • 有形固定資産
  • 無形固定資産
  • その他の資産(金融資産など)
新総勘定元帳の有効化について

本ブログでは、新総勘定元帳が有効化されている固定資産管理を前提とする。

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固定資産に関する組織系マスタ

固定資産で新たに登場するマスタとして償却表償却領域がある。まずはそれぞれの関係性を図示しておく。

償却領域

償却領域は、固定資産の金額を管理する単位である。帳簿価格用、税務用、IFRS用など固定資産×償却領域ごとに減価償却費の計算を分けられる。たとえば、建物の償却費を帳簿価格用だと1,000円で計上、税務用だと500円で計上、といったように分けて管理できる。これによって要件に応じた償却費の管理ができる。

ポイントを軽くまとめておく。

  • 償却領域「01」は、リーディング償却領域と呼ばれる。サンプル償却表におけるその国固有の会計原則が反映されている。
  • リーディング償却領域以外の償却領域には、目的に応じて定義する。(IFRS用、税務用など)
  • 固定資産ごと、償却領域ごとに償却方法(償却キー、耐用年数)を指定する。

償却表

償却表は、各国で必要な減価償却のルールをまとめたものである。ただ、設定する項目はコード値くらいで、次に紹介する償却領域をとりまとめたものという認識でよい。

また、償却表は会社コードに割当するが、1つの会社コードに対して1つの償却表のみ割当できることを注意しておこう。

SAPでは、様々な国のテンプレートを用意しているので、テンプレートの償却表をコピーして作成する方法がベター。テンプレートをコピーすると、償却表に紐づく償却領域や償却キーがまとめてコピーされる。

償却キー

償却キーは、償却費の計算方法をまとめたもの。定率法で償却するのか、定額法で償却するのか、といった設定を保持している。詳細は、別ページにて説明する。

管理会計対象の割当

管理会計対象の割当とは、端的に言うと固定資産に原価センタ、内部指図を割当すること。

管理会計対象(以後”CO対象”)とは、管理会計で管理する組織系マスタ、つまり原価センタや内部指図、WBS要素などを指す。

固定資産の処理によって発生する伝票、たとえば「減価償却費 / 減価償却累計額」という仕訳を管理会計に流すためには、減価償却費の明細に原価センタを入力する必要がある。この減価償却費の原価センタを自動で入れるために、固定資産に原価センタ(管理会計対象)を割当しておきましょうという話。SAPの用語は、なんてわかりにくいんでしょう。

さて、この資産マスタに割当できるCO対象は以下のとおり。

  • 原価センタ
  • 内部指図
  • 活動タイプ

なお、資産に対してCO対象を2つ割当することはできない。(たとえば、原価センタ1と原価センタ2を同じ資産に割当できない、という意味。原価センタと内部指図を割当する、というのは可能。)

これを解決する方法が、内部指図の決済である。

減価償却費をひとまず内部指図に溜めておき、内部指図から各原価センタへ減価償却費を振り替えるというもの。このとき、内部指図から複数の原価センタへの振替が可能である。この振替をSAPでは決済と呼んでいる

総勘定元帳へのデータ連携(総勘定元帳との統合)

まず、統合という用語について軽く触れておく。SAPでは、データの連携を統合と呼んでいる。ここでは固定資産管理から総勘定元帳へのデータ連携を説明するが、これをSAPでは総勘定元帳との統合と呼んでいる。

まず、押さえておくべきは、固定資産管理で扱う金額は2種類あること。

減価償却減価償却の金額
・G/Lにデータを流すには、必ずプログラムを実行する必要がある。
 そのため、連携タイミングは定期的にプログラムを実行するタイミング。
資産価額減価償却以外の金額。取得価額、売却益、売却損、廃棄損など。
 ※SAP実機では、「取得価額(APC)」と記載されていることもあるが、
  これも取得価額だけでなく減価償却以外と捉えてよいだろう。
・G/Lへのデータ連携は、プログラムによる連携だけでなくリアルタイムも可能

表のとおり、減価償却と資産価額ではデータ連携できるタイミングが異なる。償却領域ごとに減価償却、資産価額をいつG/Lにデータ連携するのか、そもそもG/Lにデータを流さないのかを決めている

各償却領域ごとに、以下のいずれかの区分を選択する。

転記方法備考
0領域による転記なし減価償却、資産価額ともに転記なし
1領域によるリアルタイム転記減価償却は定期的、資産価額はリアルタイムで転記
2領域による定期的な資産価額と減価償却の転記減価償却、資産価額ともに定期的に転記
※S/4では選択できなくなっている
3領域による減価償却のみ転記減価償却は定期的、資産価額は転記なし
4領域による資産価額の直接転記、減価償却の定期的な転記減価償却は定期的、資産価額はほぼリアルタイムで転記。
ほぼリアルタイムとは、取引したタイミング(例:資産取得時)での転記となる。

パラレル会計における償却領域の設定

少し発展した話になるが、パラレル会計における償却領域の設定について説明する。そもそもパラレル会計がわからない人は、以下を参照。
9-2.パラレル会計-複数勘定アプローチ
9-3.パラレル会計-複数元帳アプローチ

  • 複数勘定アプローチ
    • 償却領域ごとに使用する勘定コードを変えることで実現する
    • データの登録:償却領域ごとにデータ登録する勘定コードを変える
      例:日本用償却領域→減価償却費-日本
        IFRS用償却領域→減価償却費-IFRS
    • データの照会:財務諸表バージョンを日本用、IFRS用で分ける
      ※それぞれにG/L勘定コードを割当しておく
      例:日本用財務諸表バージョン→減価償却費-日本 を出力する
        IFRS用財務諸表バージョン→減価償却費-IFRS を出力する
  • 複数元帳アプローチ
    • 償却領域に対して元帳グループを割り当てることで実現する
      ※データの登録、照会については複数勘定アプローチの勘定を元帳に変えただけ
    • ただし、欲しい金額が欲しい元帳に対してのみ流れるわけではない
      たとえば、償却領域「01」は減価償却の金額以外がすべてG/Lに流れる
      償却領域にG/Lを割り当てるのではなく、ウィザードを使用する
      【SPRO>財務会計>固定資産管理>評価>償却領域>定義: パラレル評価領域】

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カスタマイズ操作方法

償却表、償却領域のコピー:EC08

まずは、標準で用意されているサンプルの償却表をコピーする。この処理によって、償却表に紐づく償却領域もコピーされる。

  1. SPRO>財務会計>固定資産管理>組織構造>コピー: 参照償却表/償却領域 を起動する。
  2. コピー: 参照償却表 を選択する。
  3. メニューバー>組織オブジェクト>組織オブジェクトコピー を選択する。
  4. 以下のデータを入力して、Enterを押下する。
    →コピーが実行されたことを確認し、前画面に戻る。
償却表(コピー元)[0JP]サンプル償却表:日本
償却表(コピー先)Z0JP(任意)

続いて、償却表の名称を変更する。

  1. 同じく コピー: 参照償却表/償却領域 を起動する。
  2. 指定: 償却表明 を選択する。
  3. 償却表「Z0JP」の名称を変更して、保存する。(例:日本償却表)

不要な償却領域を削除する

  1. 同じく コピー: 参照償却表/償却領域 を起動する。
  2. コピー/削除: 償却領域 を選択する。
  3. 償却表「Z0JP」を入力して、Enterを押下する。
  4. 以下の償却領域を残し、その他の償却領域を削除して、保存する。
償却領域償却領域名会計基準
1帳簿償却GAAP
15税務 ※名称を変更するGAAP

償却表を会社コードに割当:OAOB

  1. SPRO>財務会計>固定資産管理>組織構造>割当: 償却表→会社コード を選択する。
  2. 会社コード「1000」の償却表に「Z0JP」を入力して、保存する。

償却領域からG/L(総勘定元帳)への転記を確認する

  1. SPRO>財務会計>固定資産管理>総勘定元帳との統合>定義: 転記方法(償却領域→総勘定元帳) を選択する。
  2. 償却領域「[1]帳簿償却」のG/Lが「領域によるリアルタイム転記」となっていることを確認する。

償却領域に財務諸表バージョンを割当する:OAYN

  1. SPRO>財務会計>固定資産管理>総勘定元帳との統合>定義: 資産レポートの財務諸表バージョン を選択する。
  2. 会社コード「1000」を選択して、画面左の財務諸表バージョン割当をダブルクリックする。
  3. 以下のデータを入力して、保存する。
    ※財務諸表バージョンは、9-4.決算処理、財務諸表バージョンにて登録済みの前提。
償却領域償却領域名財務諸表バージョン
1帳簿償却1000
15税務1000

償却領域の通貨を設定する:OAYH

  1. SPRO>財務会計>固定資産管理>評価>通貨>定義: 外貨の償却領域 を選択する。
  2. 会社コード「1000」を選択して、画面左の償却領域通貨をダブルクリックする。
  3. 以下のデータを入力して、保存する。
償却領域償却領域名通貨
1帳簿償却JPY
15税務JPY

1つの償却領域で管理できる通貨は1つのみ。そのため、複数の通貨(外貨)を管理するために、通貨の設定のみ異なる償却領域を用意することがある。

【例】
  償却領域[01]:国内通貨用
  償却領域[11]:グループ会社共通通貨用

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テーブル

テーブルID内容説明備考
V_T093C_00資産管理の会社コード更新
ANKA資産クラス: 一般データ
ANKB償却領域
ANLC資産価格項目

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演習問題

※複数回答の設問あり。
※答えはドラッグすると見れる。

資産マスタに割当できる管理会計対象は、次のどれか。

A. 原価センタ
B. 利益センタ
C. セグメント
D. 活動タイプ
E. 内部指図

正解:ADE

1つの資産に対して、その資産から発生する減価償却費を2つの原価センタに振り分けたい。どのように設定するか。

A. 該当資産に2つの原価センタを割当する
B. 原価センタと利益センタを割当し、利益センタから原価センタへデータを連携する
C. 内部指図を割当し、内部指図から2つの原価センタへ決済する

正解:C

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