概要
会計伝票の伝票ヘッダ、および明細について解説する。
本ページでは伝票ヘッダについて、明細については次回解説する。後にヘッダと明細についてまとめたページを用意するので、まずは一読してざっと理解してほしい。その後、まとめのページで理解を深めることをオススメする。
カスタマイズ、トランザクションコード
- FBN1 – 会計伝票番号範囲
- OBA7 – 伝票タイプ定義
会計伝票について
「伝票」について
SAPでは、ほぼすべてのトランザクションデータをこの「伝票」という形で管理している。仕入先に注文する伝票を購買伝票といい、得意先からの発注を受けて登録する伝票を販売伝票という。財務会計で登録される伝票は、会計伝票もしくはFI伝票と呼ぶ。(以後、単に「伝票」と記載した場合は会計伝票と読み替えていただきたい。)
そして「伝票」は、ヘッダと明細という構成をしており、会計伝票もこの構造である。
ヘッダには、会計伝票を登録した日、登録した人などの情報を持っており、明細には、仕訳の中身(借方:経費○○円、貸方:現金○○円、など)を持っている。
伝票のヘッダテーブルと明細テーブル
伝票はヘッダと明細の構造をしているが、データベースもヘッダと明細それぞれ用意されている。
たとえば、会計伝票のテーブルであれば、ヘッダ情報がBKPFテーブルで管理され、明細情報がBSEGテーブルで管理されている。登録したデータをDB上で確認する際は、これらのテーブルを確認すればいい。
トランザクション画面の動きとDBの動きを合わせて追いかけることで理解が深まるので、よく見てほしい。
伝票タイプと転記キー
さて、この伝票タイプと転記キーは財務会計の基礎中の基礎である。しかしながらネーミングセンスが悪すぎるせいでとっつきにくく、拒絶反応を起こしたくなる。きちんと説明していくので一つ一つ押さえていこう。
まず、端的に説明すると、伝票タイプは伝票のヘッダを管理・制御している。転記キーは伝票の管理・明細を制御している。
伝票タイプ | ヘッダ情報を管理・制御している。 転記できる勘定タイプ、伝票番号の番号範囲、伝票ヘッダ項目の必須入力などを 制御している。 |
転記キー | 明細情報を管理・制御している。 転機できる勘定タイプ、借方/貸方どちらに転記するのか、などを制御している。 |
本ページでは伝票タイプについて解説し、転記キーは次回で解説する。
伝票タイプ
前述のとおり、伝票のヘッダを制御しており、伝票の種類を表す。例えば、得意先への請求書、仕入先からの請求書、仕入先への支払、一般会計の伝票、など。コード体系は、アルファベット・数字2桁で構成されている。
伝票タイプによって、以下が制御されている。
伝票番号の番号範囲 | 会計伝票の伝票番号が取れる範囲を指定する。 |
反対仕訳伝票タイプ | 反対仕訳を登録する際の伝票タイプを指定できる。 指定しない場合、元伝票と同じ伝票タイプになる。 |
転記可能な勘定タイプ | 伝票で入力することができる勘定の種類 (資産勘定、仕入先勘定、得意先勘定など)を定義している。 |
伝票入力時の必須項目 | 参照番号、伝票ヘッダテキストを必須入力に設定できる。 |
管理データ | 以下の有効/無効を設定している。 ・正味転記にする(参考:10-4.固定資産-取得-) ・得意先、仕入先のどちらかのみ入力可能にする ・マイナス転記可能にする(反対仕訳ではなく、通常の伝票で マイナス転記できるかを制御) ・会社間転記 ・取引会社を手入力可能にする |
伝票番号の番号範囲
伝票タイプで番号範囲が決まるが、これは会計伝票の伝票番号を制御している。仕入先からの購買で起きる会計伝票は10001~20000、得意先への請求で起きる会計伝票は20001~30000、と伝票番号を切り分けるために利用する。今の例で両方の番号範囲を10001~20000とすることも可能。
内部番号割当と外部番号割当
伝票番号の採番方法に、自動(連番)で採番する方法と、手動(手入力)で採番する方法がある。自動(連番)で採番する方法を内部採番、あるいは内部番号割当という。手動で採番する方法を外部採番、あるいは外部番号割当という。
勘定タイプ
勘定タイプとは、一言で表現すると勘定の種類である。勘定タイプは、SAP標準で用意されており、勘定タイプは、資産、得意先、仕入先、品目、総勘定元帳、二次原価の6種類のみ。追加・削除することはできない。
- A:資産
- K:得意先
- D:仕入先
- M:品目
- S:総勘定元帳
- 二次原価 ※二次原価にはコード値なし
システム的な意味合いは、この勘定タイプごとに転記可能な期間(転記日)を制御している。たとえば、資産勘定は2020年1月~2月の転記日で転記可能、仕入先勘定は2020年2月の転記日のみ転記可能、といった制御がかけられる。
要所要所で出てくるが、その都度説明するので、今はざっくり理解しておけばいい。
カスタマイズ操作方法
今回は伝票タイプの登録、および番号範囲の登録と割当を実施する。先に番号範囲を登録しておく方が、カスタマイズがスムーズである。
- 伝票番号の番号範囲を登録
- 伝票タイプの登録、番号範囲の割当
伝票番号の番号範囲を登録:FBN1
- SPRO>財務会計>財務会計共通設定>伝票>伝票番号範囲>入力ビューの伝票>定義: 入力ビューの伝票番号範囲 を選択する。
- 会社コード「1000」を入力する。
- 「番号範囲変更」ボタンを押下する。
- 以下のデータを入力し、保存する。
※年度の挿入方法は、行選択してメニューバー>編集>年度挿入 を選択。
No.(番号範囲) | 01 |
年(終了年度) | 9999 ※終了年度を入力するため、年度による変更がない場合は9999でよい。 |
開始番号 | 1000000000 |
終了番号 | 2000000000 |
伝票タイプの登録、番号範囲の割当:OBA7
- SPRO>財務会計>財務会計共通設定>伝票>伝票タイプ>定義: データ入力ビューの伝票タイプ を選択する。
- 「新規エントリ」ボタンを押下する。
- 以下のデータを入力し、保存する。
伝票タイプ | K1 |
テキスト | 支払 |
- 登録した伝票タイプ「K1」をダブルクリックする。
- 以下のデータを入力し、保存する。
番号範囲 | 01 |
勘定タイプ | 資産、得意先、仕入先、品目コード、総勘定元帳をONにする。 |
テーブル
テーブルID | 内容説明 | 備考 |
---|---|---|
T003 | 伝票タイプ | |
BKPF | 会計伝票ヘッダ | 会計伝票のヘッダデータ。 S/4以降はACDOCAのテーブルに統合されている。 |
BSEG | 会計伝票明細 | 会計伝票の明細データ。 S/4以降はACDOCAのテーブルに統合されている。 |
NRIV | 番号範囲間隔 | 会計伝票の番号範囲を保持 オブジェクト名:RF_BELEGが対象。 Subobject 値:会社コード |
演習問題
※複数回答の設問あり。
※答えはドラッグすると見れる。
伝票タイプは、どのレベルで登録されるか。
A. クライアントレベル
B. 会社コードレベル
C. 伝票タイプレベル
D. 勘定タイプレベル
正解:A
外部番号割当に関する記述で正しいものを選択せよ。
A. 伝票番号は連番で採番される。
B. 伝票番号は自動で採番される。
C. 伝票番号は手入力で採番される。
D. 伝票番号は数字のみ使用可能である。
正解:C
伝票番号の番号範囲は複数の伝票タイプに割当が可能である。
A. 正
B. 誤
正解:A
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