概要
いよいよ固定資産に関する伝票登録を解説する。まずは、固定資産の取得について。
カスタマイズ、トランザクションコード
- F-90 – 仕入先からの取得
- AW01N – 資産エクスプローラ
- ACSET – 指定: 勘定割当対象の勘定割当タイプ
- ABZON – 自動相殺仕訳のある取得
- F-91 – 相殺相手勘定入力
資産の取得登録
債務(AP)と統合している場合
債務と連携している場合は、トランザクション:F-90「仕入先からの取得」から資産の取得を登録する。たとえば、機械を未払金で購入した場合の伝票入力は以下のとおり。
このとき、仕入先請求書と同様、未払金勘定を直接入力するのではなく、仕入先コードを入力する。また、資産側についても機械勘定を直接入力するのではなく、資産マスタを入力する。すると未払金、機械の勘定で自動転記される。
在庫/購買管理(MM)と統合している場合
MMと連携している場合は、MM伝票(請求書照合など)によって会計伝票が自動で同時起票される。たとえば、商品の仕入れによって発生する伝票が登録されると、自動で会計伝票が登録される。
統合していない場合
債務や在庫/購買管理と統合していない場合は、固定資産の相手勘定に消込勘定(G/L勘定)を指定して、資産取得を登録する。
これは、別途請求書が事前に登録されている(もしくは後に遅れて登録する)ことを想定しており、請求書が固定資産の計上と切り離されている。そのため、消込勘定という仮の勘定で計上しておき、後に相殺する形になっている。
伝票の入力情報
伝票入力時に、入力必須の項目は以下のとおり。
- 取引タイプ(略:TTY):取引の種類
- 例:取得、廃棄、売却
- 資産評価日:固定資産の取引を行った日付
- 例:取得日、廃棄した日付、売却日
取引タイプ
取引タイプとは、固定資産の取引の種類を表す。たとえば、取得、廃棄、売却など。取引に応じて転記する勘定を分けている。先程の例だと、取得→機械、廃棄→固定資産除却損、売却→固定資産売却損益、など。
また、資産台帳のどこに金額を表示するか指定する際に使用する。
取得価額について
取得価額の算出について、総額法と正味額法の2パターンある。
- 総額法:現金割引に関わらず、全額を取得金額とする
- 正味額法:最大現金割引を行った金額を取得金額とする
取得価額の算出方法は、伝票タイプで制御している。正味額法を採用する場合は、以下のカスタマイズを設定すること。
【カスタマイズ】
SPRO>財務会計>財務会計共通設定>伝票>伝票タイプ>定義: データ入力ビューの伝票タイプ において「正味転記伝票タイプ」をONにする。
資産の照会:資産エクスプローラ(AW01N)
資産エクスプローラ(Tr-Cd:AW01N)は、固定資産の補助元帳上の金額を確認するための機能である。
- 画面中央が資産の金額に関するデータ
- 計画価額:先々に発生する予定の償却費を見込んだ数値
- 記帳額:実際に転記済の数値
- 比較:転記済の金額を年度で比較したり、償却領域で比較したりできる
- パラメータ:償却に関するデータ(耐用年数など)
- 画面下部には、資産の金額に関するデータの詳細(取引金額、各月の償却費)を表示
- 画面左に「償却領域」が並んでいる
- 各償却領域をダブルクリックすることで、その償却領域に転記した金額を表示する
- 画面左下に関連するマスタ(仕入先、原価センタ、G/L勘定コードなど)が並んでいる
- ダブルクリックすると、各マスタに飛ぶ
資産マスタの更新
最初の取得転記時に、資産マスタレコードで以下の情報が自動的にセットされる。
タブ | 項目 | 備考 |
---|---|---|
一般データ | 資本化日付 | 資産評価日から誘導される。 |
一般データ | 初回取得日 | 資産に関連するマスタの初回取得日が、 資産評価日から誘導される。 |
一般データ | 取得年度、取得期間 | 転記日付から誘導される。 |
元 (発生源) | 仕入先 | (APと統合している場合) 取得元の仕入先コードがセットされる。 |
償却領域 | 償却開始日 | 資産評価日と償却キーにより、 各償却領域の償却開始日がセットされる。 |
在庫購買管理(MM)統合時の資産取得、非統合資産の取得
在庫購買管理(MM)統合時の資産取得
MMと連携している場合は、MM伝票(請求書照合など)によって会計伝票が自動で同時起票される。たとえば、商品の仕入れによって発生する伝票が登録されると、自動で会計伝票が登録される。
このとき、入庫で商品の仕入伝票を起こすか、請求書照合で仕入伝票を起こすか決められる。請求書照合で仕入伝票を起こす場合は、購買発注伝票の明細の納入管理タブにある「入庫(非評価)」フラグをONにする。
債務(AP)、在庫購買管理(MM)非統合時の資産取得
債務や在庫/購買管理と統合していない場合は、固定資産の相手勘定に消込勘定(G/L勘定)を指定して、資産取得を登録する。
業務として、以下のパターンが想定される。
- 仕入先請求書が資産よりも先に到着した。
- 事前に仕入先請求書(消込勘定/未払金)が登録されており、後に資産取得(機械/消込勘定)を登録する。
- 資産はすでに納入され、使用されているが、請求書が届いていない。
- 資産取得(機械/消込勘定)は登録済みであるが、請求書(消込勘定/未払金)が未登録の状態。
トランザクションコード:ABZON「自動相殺仕訳のある取得」を利用する。
利益センタ、セグメントの誘導
FI伝票への利益センタ、セグメントの誘導について解説する。
まず、原価センタ、利益センタ、セグメントの構造を振り返る。原価センタに利益センタを割り当て、利益センタにセグメントを割り当てする。そのため、資産マスタの原価センタから利益センタを誘導し、利益センタからセグメントを誘導する。
※参考:2-4.セグメント、利益センタ、原価センタ
FI伝票への利益センタやセグメントの誘導方法
資産マスタに利益センタ、セグメントを割当するだけでは、FI伝票に値がセットされない。FI伝票に利益センタ、セグメントをセットするには、次の作業が必要になる。
- セグメントレポート有効化前(EHP4以前)
- 資産マスタに原価センタ等を入力(利益センタ、セグメント項目がマスタにないため)
- 原価センタ等に対して勘定割当オブジェクトを設定
- セグメントレポート有効化後(EHP5以前)
- 資産マスタに利益センタ、セグメントを入力
- 利益センタ、セグメントに対して勘定割当オブジェクトを設定
※利益センタ、セグメントに対して直接設定する
セグメントレポートの有効化
EHP5以後に用意された機能で、有効化すると以下が変更される。
- 資産エクスプローラで、資産マスタに割当された利益センタが表示される
- AS01など資産を一括登録する際、利益センタおよびセグメントを手入力できる
【カスタマイズ】
- SPRO>財務会計>固定資産管理>総勘定元帳との統合>セグメントレポート>有効化: セグメントレポート を起動する。
- セグメントレポート有効をONにして、保存する。
勘定割当オブジェクトの定義:ACSET
勘定割当オブジェクトでは、どの項目をFI伝票に反映させるかを定義している。先程の説明では、EHP4以前は原価センタ、EHP5以降は利益センタとセグメントをFI伝票へ反映させる設定をしている。
利益センタ、セグメントを後で誘導する方法
すでに有効化された資産に対して、利益センタ、セグメントを後で誘導するためのプログラム(FAGL_ASSET_MASTERDATA_UPD)が用意されている。
カスタマイズ操作方法
事前準備
資産取得用に仕入先「Vendor_A01」を登録する。
- SAPメニュー>会計管理>財務会計>債務管理>マスタレコード>登録(Tr-Cd:FK01)を起動する。
- 以下のデータを入力し、保存する。
仕入先 | Vendor_A01 |
会社コード | 1000 |
参照 | |
仕入先 | Vendor01 |
会社コード | 1000 |
資産取得:F-90
資産取得:F-90
- SAPメニュー>会計管理>財務会計>固定資産>転記>取得>外部取得>仕入先あり(Tr-Cd:F-90)を起動する。
- 以下のデータを入力し、Enterを押下する。
伝票日付 | 2000/04/01 |
タイプ | [KN]仕入先正味 |
転記日付 | 2000/04/01 |
転記キー | [31]請求書 |
勘定 | Vendor_A01 |
- 第一明細画面で以下のデータを入力し、Enterを押下する。
金額 | 11,000 |
税コード | (任意 ※本演習では10%とする) |
税額計算 | ON |
転記キー | [70]借方資産 |
勘定 | (「切断機-001」の資産番号) |
取引タイプ | [100]取得: 外部からの資産取得 |
- 第二明細画面で金額に「*」を入力し、Enterを押下する。
- 伝票を保存(転記)する。
伝票照会:FB03
- 先程登録した伝票を伝票照会(Tr-Cd:FB03)などで照会する。
- 仕入先明細をダブルクリックし、買掛金勘定で計上されていることを確認する。
- 前画面に戻り、切断機-001の明細をダブルクリックする。
→勘定設定の「[A10010]機械」で計上されていることを確認する。
資産確認:AW01N
- SAPメニュー>会計管理>財務会計>固定資産管理>資産>資産エクスプローラ を起動する。
- 「切断機-001」の資産番号を入力し、Enterを押下する。
転記された会計伝票を確認する
- 画面下部の「取引」欄から取引タイプ「[100]取得: 外部からの資産取得」をダブルクリックする。
→先程登録した資産取得の伝票に遷移する。
取得価額の確認
- 画面中央の「取得価額」が「10,000」となっていることを確認する。
償却情報の確認
- 画面中央の「パラメータ」をクリックし、償却キー、耐用年数、通常償却開始日(転記月の初日)を確認する。
- 画面中央の「比較」をクリックし、「15」をクリックする。
→「01」と「15」が選択され、「<01>」「<15>」の表記になる。
→償却費が償却領域ごとに異なっていることを確認する。
資産マスタの照会
- メニューバー>ジャンプ>マスタデータ照会 をクリックする。
→資産マスタ画面に遷移する。 - 資本化日付、初回取得日、取得年度が更新されていることを確認する。
- 「元」(もしくは「発生源」)タブをクリックする。
→仕入先が更新されていることを確認する。 - 「償却領域」タブをクリックする。
→通常償却開始日が更新されていることを確認する。
テーブル
テーブルID | 内容説明 | 備考 |
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コメント
すごく分かりやすかったです。
ありがとうございます。
コメントありがとうございます!
参考になれば幸いです。