概要
SAPの基本となるマスタ、仕入先と得意先について解説する。これらはMM、SD領域のマスタとなるため、本ページではFIに関係する基本的なところだけ拾っていく。
カスタマイズ、トランザクションコード
- FD01 – 得意先マスタ登録
- FK01 – 仕入先マスタ登録
- FK08 – 仕入先変更確認
仕入先、得意先について
いわゆる業務上の仕入先、得意先を管理するマスタ。詳しいことはググればだいたい出てくる。
仕入先マスタ、得意先マスタの3つのレベル
仕入先マスタ、得意先マスタ(以後、単に「仕入先」「得意先」と書くこともある)は、3つのレイヤーに分けて項目を持っている。
クライアントレベル | すべての会社からアクセスできるデータ。一般データという。会社コードや購買組織に依らない項目を設定する。 ・仕入先コード ・仕入先名称 ・住所 ・得意先コード(仕入先でも得意先でもある場合、両者を紐付けする) ・口座番号 など |
会社コードレベル | 各社固有の項目を設定している。各社ごとに変わる項目を設定する。主にFI領域で使うことになる。同じ仕入先でも会社コードごとに異なる設定が可能。 ・統制勘定(設定すると、統制勘定の自動転記が可能になる ※参考) ・支払条件 ・支払方法 など |
【仕入先の場合】 購買組織セグメントレベル 【得意先の場合】 販売エリアセグメントレベル ※以後、「購買レベル」「販売レベル」と略すことあり | 購買組織、販売組織ごとに変わる項目を設定する。主にMM、SD領域で使うことになる。 同じ仕入先でも購買組織、販売組織ごとに異なる設定が可能。 なぜ購買は「組織」と言って、販売は「エリア」と言っているかは永遠の謎。 |
完全な仕入先コード、得意先コード
3つのレベルをすべて設定する必要はない。クライアントレベルは必須だが、会社コードレベル、購買or販売レベルの設定は任意。必要に応じて設定する。
クライアントレベル、会社コードレベル、購買組織セグメント(もしくは、販売エリアセグメント)の3つのレベルすべて設定されているマスタを完全な仕入先コード、完全な得意先コードという。逆にいずれかの設定が欠けていると、不完全な仕入先コード、不完全な得意先コードという。
SAPでは、この完全という言葉を、「漏れのない状態」とか「すべて満たす状態」というニュアンスで使っており、他でもしばしば登場する。
共通更新と個別更新
業務上、財務担当者はクライアントレベルと会社コードレベルの項目を設定し、購買・販売担当者はクライアントレベルと購買レベル・販売レベルの項目を設定する。そのため、ユーザに応じて利用するトランザクションを分けられるように、それぞれのトランザクションが用意されている。
すべてのレベルが更新できるトランザクションを共通更新といい、特定のレベルのみ更新できるトランザクションを個別更新という。頭の片隅に入れておく程度でいい。
【仕入先マスタ】
利用用途 | 登録 | 変更 | 照会 | 設定できるレベル |
---|---|---|---|---|
共通更新 | XK01 | XK02 | XK03 | クライアントレベル、会社コードレベル、 購買レベルの登録、変更、照会が可能。 |
個別更新(FI) | FK01 | FK02 | FK03 | クライアントレベル、会社コードレベルの 登録、変更、照会が可能。 |
個別更新(MM) | MK01 | MK02 | MK03 | クライアントレベル、購買レベルの 登録、変更、照会が可能。 |
【得意先マスタ】
利用用途 | 登録 | 変更 | 照会 | 設定できるレベル |
---|---|---|---|---|
共通更新 | XD01 | XD02 | XD03 | クライアントレベル、会社コードレベル、 販売レベルの登録、変更、照会が可能。 |
個別更新(FI) | FD01 | FD02 | FD03 | クライアントレベル、会社コードレベルの 登録、変更、照会が可能。 |
個別更新(SD) | VD01 | VD02 | VD03 | クライアントレベル、販売レベルの 登録、変更、照会が可能。 |
仕入先、得意先の勘定グループ
はい出てきました「勘定グループ」。SAP厄介ワードの一つである。これまでにG/L勘定の勘定グループが出てきた。G/L勘定の勘定グループと、仕入先(得意先)の勘定グループはまったく別物なので、注意すること。後ほど、G/L勘定グループと仕入先勘定グループを比較した話もするので必要に応じて読み返してほしい。※以後、仕入先の勘定グループを前提に解説するが、得意先の勘定グループも同様である。
仕入先の勘定グループは、仕入先コードのコード体系を制御する設定である。たとえば、国内の仕入先はK001~K999、海外の仕入先はG001~G999、というように仕入先コードのコード体系を制御している。同様に、得意先の勘定グループは、得意先コードのコード体系を制御する。
仕入先マスタを登録する際、勘定グループを指定することで制御がかかる。
番号範囲、項目ステータス
仕入先、得意先の勘定グループのシステム的な役割は2つある。
- 仕入先コード(得意先コード)の番号範囲を設定している
- 前述のとおり、たとえば国内の仕入先はA001~A999、海外の仕入先はB001~B999、というように仕入先コードが設定できる範囲を制御している。
- 仕入先マスタ(得意先マスタ)の項目ステータスを制御している
- マスタ登録時の項目の非表示or表示のみor入力必須or任意入力を制御している。
※G/L勘定の場合は会社コードレベルのみの制御であったが、仕入先(得意先)の勘定グループは全レベルの項目ステータスを管理している。
- マスタ登録時の項目の非表示or表示のみor入力必須or任意入力を制御している。
カスタマイズ操作方法
仕入先マスタを登録する。仕入先マスタの登録には、仕入先の勘定グループが必要なため、先に仕入先の勘定グループを登録してから、仕入先マスタを登録する。
勘定グループの登録、項目ステータスの設定
- SPRO>財務会計(新規)>債権管理および債務管理>仕入先コード>マスタデータ>仕入先マスタデータ登録準備>定義: 仕入先勘定グループ/画面レイアウト を選択する。
- KRED 仕入先(内部採番)を選択し、編集>別名コピー でコピーする。
- 勘定グループに「K001」を入力し、保存する。
- 項目ステータスの設定を確認する。
- 「一般データ」をダブルクリックして設定を確認する。
- 「会社コードデータ」をダブルクリックして設定を確認する。
- 「購買データ」をダブルクリックして設定を確認する。
番号範囲の割当
- SPRO>財務会計(新規)>債権管理および債務管理>仕入先コード>マスタデータ>仕入先マスタデータ登録準備>割当: 番号範囲>仕入先→仕入先勘定グループ を選択する。
- 勘定グループ「K001」に番号範囲「XX」を割り当てる。
仕入先マスタの登録:FK01
仕入先マスタを登録し、統制勘定を設定する。これにより、仕入先コードを利用した統制勘定への転記ができるようになる。
- SAPメニュー>会計管理>財務会計>債務管理>マスタレコード>登録 を選択する。
- 仕入先の情報を入力して、Enterを押下する。
仕入先コード | Vender01 |
会社コード | 1000 |
勘定グループ | K001 |
- 一般データを入力する。
※入力内容は任意 - 会社コードデータで必要な情報を入力する。メニューバー>ジャンプ>会社コードデータ>会計情報 を選択する。
- 統制勘定を設定し、保存する。
統制勘定 | D00001 |
テーブル
テーブルID | 内容説明 | 備考 |
---|---|---|
LFA1 | 仕入先マスタ:一般 | 仕入先マスタの一般データレベル(クライアントレベル)のデータを保持 |
LFB1 | 仕入先 会社コード | 仕入先マスタの会社コードレベルのデータを保持 |
LFM1 | 仕入先 購買組織 | 仕入先マスタの購買組織レベルのデータを保持 |
LFBK | 仕入先 銀行データ | 仕入先マスタの銀行情報 |
KNA1 | 得意先マスタ:一般 | 得意先マスタの一般データレベル(クライアントレベル)のデータを保持 |
KNB1 | 得意先 会社コード | 得意先マスタの会社コードレベルのデータを保持 |
KNVV | 得意先 販売データ | 得意先マスタの販売組織レベルのデータを保持 |
KNBK | 得意先 銀行データ | 得意先マスタの銀行情報 |
ADRC | アドレス | 仕入先マスタ、得意先マスタの名称と住所 |
NRIV | 番号範囲間隔 | 得意先、仕入先マスタの番号範囲を保持。 オブジェクト名:DEBITOR(得意先)、KREDITOR(仕入先)が対象。 |
演習問題
※複数回答の設問あり。
※答えはドラッグすると見れる。
以下のうち、どの会社コードに属する人でもアクセスできる仕入先、得意先データはどれか。
A. 購買組織セグメントレベル
B. クライアントレベル
C. 会社コードレベル
D. 販売エリアセグメントレベル
正解:B
複数の得意先コードで、同じ番号範囲を使用することができる。この文章は正しいか。
A. 正
B. 誤
正解:A
得意先コードと仕入先コードで同じ番号範囲を使用することができる。この文章は正しいか。
A. 正
B. 誤
正解:B
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