【認定試験対策】財務会計(FI)9-7.外貨評価

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概要

決算期における処理のひとつ、外貨評価について解説する。

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カスタマイズ、トランザクションコード

  • F.05 – 外貨評価
  • FAGL_FC_VAL – 外貨評価
  • FAGL_FCV – 外貨評価
  • OBA1 – 準備: 外貨評価自動仕訳
  • OB09 – 未消込明細換算差損益用の勘定設定

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外貨評価

外貨評価(外貨評価プログラム)とは

決済日時点で消込されていない外貨で取引された売掛金等を、国内通貨に換算する処理。外貨の残高を決済日時点で国内通貨に評価し、財務諸表に載せるために利用する。

売掛金や買掛金を決算日時点のレートで評価し、財務諸表に反映させるのだが、このとき売掛金を直接増減させるのではなく、調整勘定を使用して売掛金の増減額を処理する。

なぜなら売掛金は統制勘定なので、得意先補助元帳を通してのみ計上可能である。そのため、外貨評価では「調整勘定」というG/L勘定を使用して売掛金の増減を管理する。

SAP的な言い方をすると、補助元帳に影響を与えず、外貨評価の仕訳は総勘定元帳に対してのみ行う。

 

また、この調整勘定は売掛金とは別のG/L勘定コードを用いるので、財務諸表バージョンで売掛金と同じノードに割当する必要がある。

外貨評価プログラムのトランザクションコード

外貨評価実行のトランザクションコードは、以下のとおり。

  • Classic GLの場合:F.05
  • New GLの場合:FAGL_FC_VAL
    • EHP5以降:FAGL_FCV

外貨評価では、次のステップで処理を行う。(詳細は後述)

  1. 提案一覧
  2. 貸借対照表基準日における評価
    • 標準ロジックの場合:  貸借対照表基準日における評価 + 反対仕訳
    • 差分転記ロジックの場合:貸借対照表基準日における評価

外貨評価の対象:2種類(未消込明細、外貨建貸借対照表勘定)

外貨評価の対象となる勘定は2パターンに分かれる。明細消込管理のあり/なしによって、次の通りに分類される。

  • 明細消込管理あり:SAPでは「未消込明細」という
    • 明細ごとに外貨評価する
  • 明細消込管理なし:SAPでは「外貨建貸借対照表勘定」という
    • 残高に対して外貨評価する

「未消込明細」となっているが、決算日を跨がずに消込済となる場合は、期内で為替差損益が精算される。詳しくは、財務会計(FI)5-3.換算レート差損益を参照。

パターンによって処理が異なるため、それぞれ見ていこう。

未消込明細の外貨評価

未消込明細については、前述のとおり明細ごとに決済日時点の換算レートで外貨を評価する。

また、決算日の翌日に反対仕訳を打つ運用(標準ロジック)と反対仕訳を打たない運用(差分転記ロジック)が選べる。

標準ロジックと差分転記ロジック

SAP標準の外貨評価では、外貨評価によって登録された伝票は、翌月1日に同じプログラムによって自動的に反対仕訳される

ただし、国によっては年度を跨いだ反対仕訳が禁止されている。その場合、評価転記の反対仕訳をしない差分転記ロジックで運用する。(カスタマイズ:SPRO>財務会計>総勘定元帳>定期処理>評価>デルタロジック有効化)

また、月次は標準ロジック、年度末は差分転記ロジックとすることも可能。その場合は、差分転記ロジック有効化のカスタマイズで「月次Rev.(月次反対仕訳許可)」をONにする。ONにすると、伝票入力時に標準ロジックor差分転記ロジックを選択できるようになる。
※伝票登録時に、「会計年度中評価(標準ロジック)」、「年度末評価(差分転記ロジック)」が表示される。

明細消込管理なしの外貨評価

明細消込管理のない外貨評価は、未消込明細に比べてシンプルである。ポイントは以下2点。

  • 残高に対して外貨評価を行う
    明細単位ではなく、残高に対してまとめて外貨評価を実施する。
  • 調整勘定を使用せずその勘定に直接計上
    未消込明細と違って調整勘定を使用しない。そのため、G/L勘定の残高を直接増減させる。このとき、損益差益と差益勘定を用意して実施する。(カスタマイズは後述

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外貨評価に関するカスタマイズ

評価領域

まず、外貨評価プログラムは評価領域単位で実行する。

評価領域は、評価方法(外貨評価する方法を決めている)や、評価した仕訳を反映させる元帳を定義している。

後述するが、複数元帳アプローチを採用している場合、評価領域を元帳ごとに用意し、評価領域の数だけ外貨評価を実施する。

評価方法

評価方法は、外貨の評価手順や、換算に使用する換算レートタイプを設定しているマスタ。

評価手順

評価手順は、評価差額の仕訳を起こす条件を決めている。以下から選択する。

低価法取引時レートと比較し、差損が出た時だけ仕訳を起こす
強制低価法評価結果(現在BSにのっている結果)と比較し、差額が出た時だけ仕訳を起こす
常時評価法※「再評価」と表記されている場合あり
差益、差損ともに仕訳を起こす
再評価のみ差益のみ仕訳を起こす

換算レートタイプ

たとえば、決済日の 日本円-USドル の換算レートはひとつではない。換算レートタイプによってレートは異なる。どの換算レートタイプを使うかを評価方法で定義している。

※換算レートタイプについては、財務会計(FI)1-4.通貨、換算レートを参照。

評価差損益の勘定コード:OBA1

評価差額の損益勘定、および調整勘定は、以下のカスタマイズ(Tr-Cd:OBA1)で設定する。

【SPRO>財務会計>総勘定元帳>定期処理>評価>外貨評価>準備: 外貨評価自動仕訳】

  • 未消込明細の外貨評価
    • 内部処理キー:KDF(換算レート差損益: 見消込明細/GL勘定)で設定
      ※もしくは、SPRO>財務会計>債権管理および債務管理>会計トランザクション>銀行支払>銀行支払共通設定>定義: 換算差損益勘定(Tr-Cd:OB09)
  • 明細消込管理なしの外貨評価
    • 内部処理キー:KDB(換算レートキーによる換算レート差損益)で設定

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【Advance】複数元帳アプローチの外貨評価

外貨評価は元帳ごと(正確には元帳グループごと)に実施する。つまり、複数元帳アプローチで元帳が2つあれば、2回外貨評価を実施する。

※参考:財務会計(FI)9-3.パラレル会計-複数元帳アプローチ

このとき、外貨評価は評価領域単位で実施する。たとえば、日本用の元帳とIFRS用の元帳がある場合は、日本用の評価領域とIFRS用の評価領域を用意して、それぞれで外貨評価を実施する。

【カスタマイズ】

  • 評価領域
    SPRO>財務会計>総勘定元帳>定期処理>評価>定義: 評価領域
  • 評価方法
    SPRO>財務会計>総勘定元帳>定期処理>評価>定義: 評価方法
  • 会計原則
    SPRO>財務会計>財務会計共通設定>元帳>パラレル会計>定義: 会計原則
    SPRO>財務会計>総勘定元帳>定期処理>評価>割当: 評価領域および会計原則
  • 元帳の会計原則割当
    SPRO>財務会計>財務会計共通設定>元帳>パラレル会計>割当: 会計原則→元帳グループ

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カスタマイズ操作方法

標準ロジック(差分転記ロジックを利用しない)で未消込明細の外貨評価を実施する。

  1. 評価領域、評価手法の登録
  2. 差分転記ロジックのカスタマイズ登録
  3. 評価差損益の勘定コード登録
  4. 外貨での得意先請求書を登録する:FB70
  5. 外貨評価の実行:FAGL_FC_VAL
  6. 各種照会

評価領域、評価手法の登録

評価領域の登録
  1. SPRO>財務会計>総勘定元帳>定期処理>評価>定義: 評価領域 を起動する。
  2. 以下のデータを入力して、保存する。
評価領域Z1
評価手法(後で入力)
通貨タイプ[10]会社コード通貨
評価方法の登録
  1. SPRO>財務会計>総勘定元帳>定期処理>評価>定義: 評価方法 を起動する。
  2. 「新規エントリ」をクリックする。
  3. 以下のデータを入力して、保存する。
評価方法Z001
テキスト常時評価(任意)
評価手順常時評価法 ※「再評価」となっている場合あり
伝票タイプ[SA]総勘定元帳
借方残高の換算レートタイプM
貸方残高の換算レートタイプM
ヘッジ使用OFF
勘定残高の換算レートタイプ設定ON
評価方法の割当
  1. SPRO>財務会計>総勘定元帳>定期処理>評価>定義: 評価領域 を起動する。
  2. 評価領域「Z1」の評価手法「Z001」を入力して、保存する。
評価領域に会計原則を割当
  1. SPRO>財務会計>総勘定元帳>定期処理>評価>割当: 評価領域および会計原則 を起動する。
  2. 「新規エントリ」をクリックする。
  3. 評価領域「Z1」、会計基準「GAAP」を入力して、保存する。

差分転記ロジックのカスタマイズ登録

  1. SPRO>財務会計>総勘定元帳>定期処理>評価>デルタロジック有効化 を起動する。
  2. 以下のデータを入力して、保存する。
評価領域Z1
デルタロジック
(差分転記ロジック)
OFF
消込日付OFF
月次 Rev.
(月次反対仕訳許可)
OFF

評価差損益の勘定コード登録

勘定コードの登録
  1. G/L勘定コード登録(Tr-Cd:FS00)などから、外貨評価に必要な勘定コードを登録する。
    ※G/L勘定コードの登録方法:2-1.G/L勘定(総勘定元帳勘定)
勘定コードテキスト
J00011為替換算差損
J00012為替換算差益
A00901売掛金(外貨評価調整)

勘定コードの割当:OBA1
  1. SPRO>財務会計>総勘定元帳>定期処理>評価>外貨評価>準備: 外貨評価自動仕訳 を起動する。
  2. 内部処理キー:KDF(換算レート差損益: 見消込明細/GL勘定) をダブルクリックする。
  3. 売掛金の勘定コードをダブルクリックする。
  4. 以下のデータを入力し、保存する。
評価差損J00011
評価差益J00012
貸借対照表調整A00901

外貨での得意先請求書を登録する:FB70

まず、未消込明細を用意するために、得意先請求書を登録する。

  1. 会計管理>財務会計>債権管理>伝票入力>請求書(Enjoy)(Tr-Cd:FB70)を選択する。
  2. 以下のデータを入力し、保存(転記)する。
伝票ヘッダ
得意先Customer01
請求書日付2020/4/1
転記日付2020/4/1
金額(任意)
通貨USD
「国内通貨」タブ
換算レート100.00
明細
G/L勘定[P00001]売上
伝票通貨額*

外貨評価の実行:FAGL_FC_VAL

  1. SAPメニュー>会計管理>財務会計>債権管理>定期処理>決算処理>評価>未消込明細の外貨評価(Tr-Cd:FAGL_FC_VAL)を起動する。
  2. 以下のデータを入力して、実行(テスト実行)する。
一般選択
会社コード1000
評価基準日2021/3/31(会計期間の末日)
評価領域Z1
「転記」タブ
テスト実行ON
自動設定ON
「未消込明細: 補助元帳」タブ
得意先評価ON
得意先Customer01
「出力/技術設定」タブ
ログ出力ON
ログ保存ON
ログ名FCV_1000(任意)
  1. 実行結果を確認する。評価差額の一覧が表示されるので、評価された金額を確認する。
  2. 「2転記」をクリックする。
    →年度末に登録する評価差額の仕訳、期首に登録される反対仕訳が表示される。
  3. 前画面に戻り、転記モード「更新実行」を選択して実行する。
  4. 「2転記」をクリックする。
    →評価差額の仕訳、反対仕訳の伝票番号を確認する。
  5. 伝票照会(Tr-Cd:FB03)にて評価差額の仕訳、反対仕訳を確認する。

照会、確認

財務諸表レポートの照会

財務諸表レポートでの売掛金の見え方を確認する。

  1. SAPメニュー>会計管理>財務会計>総勘定元帳>情報管理>総勘定元帳レポート>財務諸表/キャッシュフロー>一般>実績/実績比較>財務諸表(Tr-Cd:S_ALR_87012284)を起動する。
  2. 以下のデータを入力して、実行する。
通貨タイプ10
会社コード1000
レポート年度2020
レポート期間開始01
レポート期間終了12
  1. 売掛金調整勘定が転記されていることを確認する。
    また、売掛金勘定と同じ階層に割当され、合計金額で売掛金が決算日の換算レートで評価した金額となっていることを確認する。

売掛金調整勘定と、売掛金勘定が同じ階層に割当されていない場合は、財務会計(FI)9-4.決算処理、財務諸表バージョンを参考に財務諸表バージョンを更新する。

外貨評価の実行ログの照会
  1. SAPメニュー>会計管理>財務会計>債権管理>定期処理>決算処理>評価>未消込明細の外貨評価(Tr-Cd:FAGL_FC_VAL)を起動する。
  2. 「出力/技術設定」タブをクリックする。
  3. 「ログ一覧」をクリックする。
  4. ログ一覧から実行したログを選択し、「ログ照会」ボタンをクリックする。

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テーブル

テーブルID内容説明備考

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演習問題

※複数回答の設問あり。
※答えはドラッグすると見れる。

外貨評価で利用できる評価方法は、次のどれか。

A. 低価法
B. 常時低価法
C. 再評価
D. 再評価のみ

正解:ACD

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