概要
間接費の付替・配賦について解説する。
カスタマイズ、トランザクションコード
- KSU1 – 原価センタ実績配賦周期 登録
- KSU5 – 原価センタ実績配賦周期 実行
- KSV1 – 原価センタ実績付替周期 登録
- KSV5 – 原価センタ実績付替周期 実行
- KSU7 – 原価センタ計画配賦周期 登録
- KSUB – 原価センタ計画配賦周期 実行
- KSV7 – 原価センタ計画付替周期 登録
- KSVB – 原価センタ計画付替周期 実行
- KB15N – マニュアル原価配分 入力
- KB16N – マニュアル原価配分 照会
- KB17N – マニュアル原価配分 取消
付替・配賦
付替・配賦とは
一般的な間接費の配賦について、SAPでは二通りの方法がある。
付替:同じ勘定コードで配賦を行う
【例】
A部門:材料費 1,000 ←付替元
↓付替
A部門:材料費 1,000 ←付替元
A部門:材料費 -1,000 ←付替で登録されたデータ
B部門:材料費 700 ←付替で登録されたデータ
C部門:材料費 300 ←付替で登録されたデータ
なお、付替は一次原価のみが対象となる。
配賦:別の勘定コード(二次原価要素)で配賦を行う
【例】
A部門:材料費 1,000 ←配賦元
↓配賦
A部門:材料費 1,000 ←配賦元
A部門:共通材料費 -1,000 ←配賦で登録されたデータ
B部門:共通材料費 700 ←配賦で登録されたデータ
C部門:共通材料費 300 ←配賦で登録されたデータ
配賦原価要素(二次原価要素)は、原価要素タイプ「[42]配賦」のみ指定可能。
付替・配賦には計画値、実績値の付替・配賦がある。計画か実績かの違いだけであり、本記事では特に記載がない限り実績値で話をする。
配賦の設定について
周期の構造
配賦は、周期、セグメントという設定で制御している。周期は、セグメントを束ねたものと捉えて良い。セグメントは、配賦の具体的な設定を保持している。
設定項目
周期の設定
設定項目 | 備考 |
---|---|
周期 | 周期コードを設定する。実績と計画で同じコードを使うことはできない。 ※周期コードは、付替/配賦、計画/実績、原価センタ会計/利益センタ会計/収益性分析を ひっくるめて重複が許されない。 |
開始日付 | 周期の有効開始日 |
反復フラグ | セグメント間の相互配賦をする場合、フラグをONにする。(後述) |
セグメントの設定
「セグメントヘッダ」タブ
設定項目 | 備考 |
---|---|
セグメント名 (コード) | |
セグメント名 (名称) | |
配賦原価要素 配分構造 | ※配賦のみ 配賦原価要素(二次原価要素)、もしくは配分構造(後述)を指定する。 配賦原価要素は、原価要素タイプ42(配賦)のみ指定可能。 |
センダ値 | |
センダ規則 | 配賦元の金額を決める。以下から選択。 ・記帳済金額:転記済みの金額(記帳済金額)を配賦する ・固定金額:センダの残高に関係なく、指定した金額を配賦する ・固定割合:レシーバごとに「センダ値タブの固定価格×加重係数」の金額が配賦される |
シェア(%) | 例えば、センダ規則「記帳済金額」でシェア「80%」とした場合、センダの金額に80%をかけた額が配賦される。 |
実績値 or 計画値 | センダの実績値を配賦するのか、計画値を配賦するのか。 |
レシーバトレースファクタ | |
レシーバ規則 | 配賦基準を決める。以下から選択。 ・変動割合:統計キー数値などを配賦基準として配賦する(後述) ・固定金額:割合ではなく、指定した額がレシーバに配賦される ・固定率:レシーバごとに何%配賦するのか指定する(合計が100%未満だとセンダに残高が残る) ・固定割合:指定した比率で配賦する(例:1:2) |
変動部分タイプ | (レシーバ規則で「変動割合」を選択した場合のみ) 何を係数とするのかを指定する。例:統計キー数値 |
「センダ/レシーバ」タブ
設定項目 | 備考 |
---|---|
センダ (原価センタ、原価要素など) | 配賦元のトランザクションデータの条件を指定する。 |
レシーバ (原価センタ、指図など) | 配賦先の条件を指定する。 |
「センダ値」タブ
設定項目 | 備考 |
---|---|
センダ | |
金額 | (センダ規則で「固定金額」「固定割合」を選択した場合のみ) 配賦元の金額を指定する。 |
選択基準 | |
バージョン | (レシーバ規則で「変動割合」を選択した場合のみ) 利用する配賦基準(統計キー数値など)のバージョンを指定する。 |
「レシーバトレースファクタ」タブ
設定項目 | 備考 |
---|---|
統計キー数値 | 配賦基準とする統計キー数値を指定する。 |
活動タイプ | 配賦基準とする活動タイプを指定する。 |
「レシーバ加重係数」タブ
設定項目 | 備考 |
---|---|
係数 | レシーバ規則が固定率や固定割合の際に、その%や比率を指定する。 |
変動割合で配賦する(統計キー数値を配賦基準とする)
配賦基準を固定ではなく変動させる場合、統計キー数値を利用する。たとえば、工場共通の光熱費を工場内の面積比で按分するなど。
設定としては、レシーバ規則に「変動割合」を指定、変動部分タイプに「(計画or実績)統計キー数値」を指定、統計キー数値に統計キー数値マスタ(例:工場専有面積、など)を指定する。これで、統計キー数値マスタに登録されている数値を配賦基準として配賦できる。
上の例では、統計キー数値マスタ「工場専有面積」を登録しておき、原価センタAの面積「200(㎡)」、原価センタBの面積を「300(㎡)」と登録する。そして、工場共通の交通費を統計キー数値「工場面積」(200:300)で按分するわけである。
仮に工場の改装により、面積が変わった場合は、統計キー数値の「200(㎡)」「300(㎡)」を変えれば、セグメントは修正することなく対応できる。
なお、統計キー数値だけでなく、活動タイプを配賦基準とすることも可能。
配分構造
配分構造は、配賦原価要素を複数指定するための機能。配賦元原価要素ごとに配賦原価要素を紐付けする。
図のように複数の配賦元原価要素に対して、それぞれ配賦原価要素を指定できる。配分構造を使わない場合、配賦原価要素は1勘定しか指定できないため、複数の配賦原価要素を設定する場合はその分セグメントが増える。配分構造は複数の配賦原価要素を紐付けできるため、不用意にセグメントを増やさなくて済む。
なお、配賦元原価要素は、範囲指定や原価要素グループでの指定が可能。
反復(繰り返し実行)について
周期の「反復」フラグをONにすると、セグメント間の相互配賦が可能になる。
上図のように、セグメント間でセンダ・レシーバが入れ替わっている場合、一度センダの残高が配賦された後、別のセグメントでまた金額が計上される。このとき、「反復」フラグをONにすることで、センダの残高がゼロになるまで、繰り返しセグメントの配賦を実行できる。
周期実行グループ
周期実行グループは、周期を実行する単位である。周期実行する単位を分けることで、並列処理を可能にしている。
例えば、「A工場内の光熱費の配賦と、B工場内の光熱費の配賦」は依存関係がない(配賦処理に順序がない)ため、別々の周期実行グループに割当して、並列処理すべきだろう。
一方で、「部門共通費(減価償却費など)を補助部門に配賦。その後、補助部門の費用を製造部門に配賦」という場合は、依存関係がある(配賦処理に順序がある)ため、同じ周期実行グループにまとめる。
概要を掴んだところで、システム的なポイントをまとめておく。
- 同じ周期実行グループ内にある周期は、並列処理不可能。別々の周期実行グループにある周期は、並列処理可能。
- 周期実行グループ内の実行順序は、配賦処理実行画面で制御する(実行順に周期を並べる)。
周期実行グループの設定方法
周期登録画面(Tr-Cd:KSU1など)でメニューバー>ジャンプ>周期実行グループ
配賦の処理について
マニュアル原価配分
マニュアル原価配分は、周期を設定せずに手入力で配賦する方法。2-3.管理会計伝票-二次転記の原価のマニュアル再転記に近い機能。
2-3.管理会計伝票-二次転記
押さえるべきポイント
- 一次原価要素、二次原価要素のどちらも振替できる
※原価のマニュアル再転記は、一次原価のみ。 - 転記する勘定は、すべての原価要素タイプが使用できる
※ただし、原価要素タイプ43(内部活動配分)の原価要素は、使用不可。伝票登録画面でエラーとなる。 - 実績データのみ使用可能
トランザクションコード、SAP実機操作について
トランザクションコード
- KB15N – マニュアル原価配分 入力
- KB16N – マニュアル原価配分 照会
- KB17N – マニュアル原価配分 取消
入力画面の項目
項目 | 補足 |
---|---|
原価要素 | 一次原価要素、二次原価要素どちらでも振替可能 |
金額 | |
センダ | 原価センタ以外のCOオブジェクトも可能。内部指図、WBS要素など。 |
レシーバ | 原価センタ以外のCOオブジェクトも可能。内部指図、WBS要素など。 |
更新テーブル
- 原価および収益のマニュアル再転記と同様。
間接活動配分
間接活動配分は、実績活動配分(参照:2-3.管理会計伝票-二次転記)を自動化したものである。
直接活動配分を軽くおさらいしておこう。
参照:2-3.管理会計伝票-二次転記
- 直接活動配分は、活動タイプの活動量に応じて原価を振替する方法である
- 金額はセンダ・レシーバ共にデータ登録される、数量はセンダのみデータ登録される
- 直接活動配分に使える活動タイプは、活動タイプカテゴリ「[1]マニュアル入力、マニュアル配分」を使う
- CO伝票の転記は原価要素タイプ「[43]内部活動配分」の二次原価要素を使う
- センダは原価センタのみ、レシーバは指図など他のCOオブジェクトも指定可能
間接活動配分は、周期と同じような設定画面を利用して、直接活動配分を自動化している。活動配分を定期的に実施する場合は、自動化により負荷軽減できる。
※本記事では特長の記載のみ留めて、SAP操作の詳細は要望があれば追記する。
直接活動配分と同じく、以下の特徴がある。
- 活動タイプの活動量に応じて原価を振替する方法である
- 金額はセンダ・レシーバ共にデータ登録される、数量はセンダのみデータ登録される
- CO伝票の転記は原価要素タイプ「[43]内部活動配分」の二次原価要素を使う
- センダは原価センタのみ、レシーバは指図など他のCOオブジェクトも指定可能
直接活動配分と異なる点が、利用する活動タイプの活動タイプカテゴリ2、もしくは3を使う点である。
- センダの活動数量が特定できる場合
- 活動タイプカテゴリ3(手入力、間接配賦)を使う
- センダの活動数量を特定できない(現実的でない)場合
- 活動タイプカテゴリ2(間接決定 – 間接配分)を使う
付替・配賦の取消
付替・配賦処理は取消できる。取消は、付替・配賦でできたデータの貸借入れ替えた伝票を登録する。テーブルのデータを物理削除するのではない。
- 取消はセグメント単位で行う。なお、反復関係は考慮しない。
- 取消伝票は通常、現在オープンしている会計期間に転記する。例えば、4月の配賦を5月に取消すると、5月の会計期間に取消伝票が登録される。
トランザクションコード
原価センタ会計
登録 | 変更 | 照会 | 削除 | 実行/取消 | 実行のプログラムID ※RKAGAL+???? | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
実績 | 配賦 | KSU1 | KSU2 | KSU3 | KSU4 | KSU5 | RKGALKSU5 |
付替 | KSV1 | KSV2 | KSV3 | KSV4 | KSV5 | RKGALKSV5 | |
計画 | 配賦 | KSU7 | KSU8 | KSU9 | KSUA | KSUB | RKGALKSUB |
付替 | KSV7 | KSV8 | KSV9 | KSVA | KSVB | RKGALKSVB |
カスタマイズ操作方法
実績配賦の周期・セグメントの登録、および周期の実行まで実施する。実施する内容は、統計キー数値を配賦基準としたシンプルな配賦。まずは基本的な形を理解しよう。
周期・セグメントの登録
周期の登録
- SAPメニュー>会計管理>管理会計>原価センタ会計>期末処理>現在の設定>配賦定義(Tr-Cd:KSU1)を起動する。
- 周期「SY0001」を入力し、有効日付「2000/1/1」を入力し、Enterを押下する。
- テキストに「面積比率配賦(任意)」を入力し、Enterを押下する。
- 保存する。
セグメントの登録
- (引き続き周期登録画面から)メニューバー>編集>セグメント追加 を選択する。
- 以下のデータを入力し、保存する。
「セグメントヘッダ」タブ
設定項目 | 備考 |
---|---|
セグメント名(コード) | SEG01 |
セグメント名(名称) | 光熱費配賦(任意) |
配賦原価要素 | 共通光熱費 |
センダ値 | |
センダ規則 | 記帳済金額 |
シェア(%) | 100(%) |
実績値 or 計画値 | 実績値 |
レシーバトレースファクタ | |
レシーバ規則 | 変動割合 |
変動部分タイプ | 実績統計キー数値 |
「センダ/レシーバ」タブ
設定項目 | 備考 |
---|---|
センダ | |
原価センタ | [CO01]第一工場 |
原価要素 | 光熱費 |
レシーバ | |
原価センタ | [CO11]組立ライン1 to [CO12]組立ライン2 |
「レシーバトレースファクタ」タブ
設定項目 | 備考 |
---|---|
統計キー数値 | [KH02]工場専有面積 |
周期の実行
センダ原価センタに光熱費を計上する
- G/L勘定伝票入力(Enjoy)(Tr-Cd:FB50)などから光熱費を計上する。
※原価センタ「[CO01]第一工場」、G/L勘定コード「光熱費」を指定すること。
※参考:財務会計(FI)3-5.会計伝票の登録
統計キー数値を入力する
- SAPメニュー>会計管理>管理会計>原価センタ会計>実績転記>統計キー数値>入力(Tr-Cd:KB31N)を起動する。
- 以下のデータを入力して、転記(保存)する。
※転記日付「2000/1/1」と仮定する。
項目 | 第一明細 | 第二明細 |
---|---|---|
レシーバ原価センタ | [CO11]組立ライン1 | [CO12]組立ライン2 |
統計キー数値 | [KH02]工場専有面積 | [KH02]工場専有面積 |
合計数量 | 10 | 20 |
配賦を実行する
- SAPメニュー>会計管理>管理会計>原価センタ会計>期末処理>単一機能>配分>配賦(Tr-Cd:KSU5)を起動する。
- 以下のデータを入力して、実行(F8)する。
※転記日付「2000/1/1」と仮定する。
会計期間 | 1 |
会計年度 | 2000 |
テスト実行 | OFF |
周期 | [SY0001]面積比率配賦(任意) |
開始日付 | 周期マスタの開始日付 |
- 実行結果を確認する。「レシーバ数」をダブルクリックする。
→各レシーバに配賦された金額が確認できる。配賦原価要素「共通交通費」、1:2の比率で配賦されていることを確認する。 - COBK、COEPから登録された伝票を確認する。
※参考:周期の実行により登録された伝票を探す方法を教えて下さい
テーブル
テーブルID | 内容説明 | 備考 |
---|---|---|
T811C | 周期マスタ | 周期情報を保持 |
T811S | セグメントマスタ | セグメント情報を保持 ※統計キー数値のプルダウンは「項目グループ(RCDATA)」で保持 |
T811M | 配分: 項目グループのテキスト | 上記、T811S-RCDATAと紐づく。 統計キー数値が何かを保持。 |
T811L | 配賦/付替: テキスト(長) | 周期、セグメントのテキストを保持 |
T811K | 配分: キー項目 | セグメントに指定している設定値を保持。 T811C、T811S、T811Kのテーブルを引っ張ってくっつければだいたいの情報は揃う。 |
T811D | 周期実行履歴 | 周期実行履歴、実行時の伝票番号も保持 |
COBK | CO 対象: 伝票ヘッダ | |
COEP | CO 対象: 明細 (期間別) | CO伝票の明細(実績) |
COSP | CO 対象: 外部転記の原価合計 | 一次原価要素に関するCO伝票の合計値 |
COSS | CO 対象: 内部転記の原価合計 | 二次原価要素に関するCO伝票の合計値 |
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