【認定試験対策】管理会計(CO)3-2.付替・配賦

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概要

間接費の付替・配賦について解説する。

本記事では、原価センタ会計の付替・配賦についてのみ解説する。付替・配賦は利益センタ会計、収益性分析でも登場する機能であるが、それらは別の記事で解説する。

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カスタマイズ、トランザクションコード

  • KSU1 – 原価センタ実績配賦周期 登録
  • KSU5 – 原価センタ実績配賦周期 実行
  • KSV1 – 原価センタ実績付替周期 登録
  • KSV5 – 原価センタ実績付替周期 実行
  • KSU7 – 原価センタ計画配賦周期 登録
  • KSUB – 原価センタ計画配賦周期 実行
  • KSV7 – 原価センタ計画付替周期 登録
  • KSVB – 原価センタ計画付替周期 実行
  • KB15N – マニュアル原価配分 入力
  • KB16N – マニュアル原価配分 照会
  • KB17N – マニュアル原価配分 取消

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付替・配賦

付替・配賦とは

一般的な間接費の配賦について、SAPでは二通りの方法がある。

付替:同じ勘定コードで配賦を行う

【例】
A部門:材料費 1,000  ←付替元
 ↓付替
A部門:材料費 1,000  ←付替元
A部門:材料費 -1,000  ←付替で登録されたデータ
B部門:材料費 700   ←付替で登録されたデータ
C部門:材料費 300   ←付替で登録されたデータ

なお、付替は一次原価のみが対象となる。

配賦:別の勘定コード(二次原価要素)で配賦を行う

【例】
A部門:材料費 1,000    ←配賦元
 ↓配賦
A部門:材料費 1,000    ←配賦元
A部門:共通材料費 -1,000  ←配賦で登録されたデータ
B部門:共通材料費 700   ←配賦で登録されたデータ
C部門:共通材料費 300   ←配賦で登録されたデータ

配賦原価要素(二次原価要素)は、原価要素タイプ「[42]配賦」のみ指定可能

付替・配賦には計画値、実績値の付替・配賦がある。計画か実績かの違いだけであり、本記事では特に記載がない限り実績値で話をする。

用語解説

これからよく登場する用語について、触れておこう。

  • センダ:付替/配賦元を指す(上記の例では、A部門)
  • レシーバ:付替/配賦先を指す(上記の例では、B部門、C部門)
  • 配賦基準値(配賦比率):付替/配賦の比率を指す(上記の例では、7:3で配分)

SAPでは付替と配賦をまとめて「配賦」と言うことが多い。業務上も「配賦」という言葉でまとめて会話されがちである。本記事でも、単に「配賦」と記載した場合は、付替と配賦の両方を指すとする。

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配賦の設定について

周期の構造

配賦は、周期、セグメントという設定で制御している。周期は、セグメントを束ねたものと捉えて良い。セグメントは、配賦の具体的な設定を保持している。

設定項目

周期の設定
設定項目備考
周期周期コードを設定する。実績と計画で同じコードを使うことはできない。
※周期コードは、付替/配賦、計画/実績、原価センタ会計/利益センタ会計/収益性分析を
ひっくるめて重複が許されない。
開始日付周期の有効開始日
反復フラグセグメント間の相互配賦をする場合、フラグをONにする。(後述

セグメントの設定

「セグメントヘッダ」タブ

設定項目備考
セグメント名
(コード)
セグメント名
(名称)
配賦原価要素
配分構造
※配賦のみ
配賦原価要素(二次原価要素)、もしくは配分構造(後述)を指定する。
配賦原価要素は、原価要素タイプ42(配賦)のみ指定可能
センダ値
センダ規則配賦元の金額を決める。以下から選択。
・記帳済金額:転記済みの金額(記帳済金額)を配賦する
・固定金額:センダの残高に関係なく、指定した金額を配賦する
・固定割合:レシーバごとに「センダ値タブの固定価格×加重係数」の金額が配賦される
シェア(%)例えば、センダ規則「記帳済金額」でシェア「80%」とした場合、センダの金額に80%をかけた額が配賦される。
実績値 or 計画値センダの実績値を配賦するのか、計画値を配賦するのか。
レシーバトレースファクタ
レシーバ規則配賦基準を決める。以下から選択。
・変動割合:統計キー数値などを配賦基準として配賦する(後述
・固定金額:割合ではなく、指定した額がレシーバに配賦される
・固定率:レシーバごとに何%配賦するのか指定する(合計が100%未満だとセンダに残高が残る)
・固定割合:指定した比率で配賦する(例:1:2)
変動部分タイプ(レシーバ規則で「変動割合」を選択した場合のみ)
何を係数とするのかを指定する。例:統計キー数値

「センダ/レシーバ」タブ

設定項目備考
センダ
(原価センタ、原価要素など)
配賦元のトランザクションデータの条件を指定する。
レシーバ
(原価センタ、指図など)
配賦先の条件を指定する。

「センダ値」タブ

設定項目備考
センダ
金額(センダ規則で「固定金額」「固定割合」を選択した場合のみ)
配賦元の金額を指定する。
選択基準
バージョン(レシーバ規則で「変動割合」を選択した場合のみ)
利用する配賦基準(統計キー数値など)のバージョンを指定する。

「レシーバトレースファクタ」タブ

設定項目備考
統計キー数値配賦基準とする統計キー数値を指定する。
活動タイプ配賦基準とする活動タイプを指定する。

「レシーバ加重係数」タブ

設定項目備考
係数レシーバ規則が固定率や固定割合の際に、その%や比率を指定する。

変動割合で配賦する(統計キー数値を配賦基準とする)

配賦基準を固定ではなく変動させる場合、統計キー数値を利用する。たとえば、工場共通の光熱費を工場内の面積比で按分するなど。

設定としては、レシーバ規則に「変動割合」を指定、変動部分タイプに「(計画or実績)統計キー数値」を指定、統計キー数値に統計キー数値マスタ(例:工場専有面積、など)を指定する。これで、統計キー数値マスタに登録されている数値を配賦基準として配賦できる。

上の例では、統計キー数値マスタ「工場専有面積」を登録しておき、原価センタAの面積「200(㎡)」、原価センタBの面積を「300(㎡)」と登録する。そして、工場共通の交通費を統計キー数値「工場面積」(200:300)で按分するわけである。

仮に工場の改装により、面積が変わった場合は、統計キー数値の「200(㎡)」「300(㎡)」を変えれば、セグメントは修正することなく対応できる。

なお、統計キー数値だけでなく、活動タイプを配賦基準とすることも可能。

配分構造

配分構造は、配賦原価要素を複数指定するための機能。配賦元原価要素ごとに配賦原価要素を紐付けする。

図のように複数の配賦元原価要素に対して、それぞれ配賦原価要素を指定できる。配分構造を使わない場合、配賦原価要素は1勘定しか指定できないため、複数の配賦原価要素を設定する場合はその分セグメントが増える。配分構造は複数の配賦原価要素を紐付けできるため、不用意にセグメントを増やさなくて済む。

なお、配賦元原価要素は、範囲指定や原価要素グループでの指定が可能

反復(繰り返し実行)について

周期の「反復」フラグをONにすると、セグメント間の相互配賦が可能になる。

上図のように、セグメント間でセンダ・レシーバが入れ替わっている場合、一度センダの残高が配賦された後、別のセグメントでまた金額が計上される。このとき、「反復」フラグをONにすることで、センダの残高がゼロになるまで、繰り返しセグメントの配賦を実行できる。

周期実行グループ

周期実行グループは、周期を実行する単位である。周期実行する単位を分けることで、並列処理を可能にしている。

例えば、「A工場内の光熱費の配賦と、B工場内の光熱費の配賦」は依存関係がない(配賦処理に順序がない)ため、別々の周期実行グループに割当して、並列処理すべきだろう。

一方で、「部門共通費(減価償却費など)を補助部門に配賦。その後、補助部門の費用を製造部門に配賦」という場合は、依存関係がある(配賦処理に順序がある)ため、同じ周期実行グループにまとめる。

概要を掴んだところで、システム的なポイントをまとめておく。

  • 同じ周期実行グループ内にある周期は、並列処理不可能別々の周期実行グループにある周期は、並列処理可能
  • 周期実行グループ内の実行順序は、配賦処理実行画面で制御する(実行順に周期を並べる)。

周期実行グループの設定方法

周期登録画面(Tr-Cd:KSU1など)でメニューバー>ジャンプ>周期実行グループ

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配賦の処理について

マニュアル原価配分

マニュアル原価配分は、周期を設定せずに手入力で配賦する方法。2-3.管理会計伝票-二次転記の原価のマニュアル再転記に近い機能。

2-3.管理会計伝票-二次転記

押さえるべきポイント
  • 一次原価要素、二次原価要素のどちらも振替できる
    ※原価のマニュアル再転記は、一次原価のみ。
  • 転記する勘定は、すべての原価要素タイプが使用できる
    ※ただし、原価要素タイプ43(内部活動配分)の原価要素は、使用不可。伝票登録画面でエラーとなる。
  • 実績データのみ使用可能

トランザクションコード、SAP実機操作について

トランザクションコード

  • KB15N – マニュアル原価配分 入力
  • KB16N – マニュアル原価配分 照会
  • KB17N – マニュアル原価配分 取消

入力画面の項目

項目補足
原価要素一次原価要素、二次原価要素どちらでも振替可能
金額
センダ原価センタ以外のCOオブジェクトも可能。内部指図、WBS要素など。
レシーバ原価センタ以外のCOオブジェクトも可能。内部指図、WBS要素など。

更新テーブル

  • 原価および収益のマニュアル再転記と同様。

間接活動配分

間接活動配分は、実績活動配分(参照:2-3.管理会計伝票-二次転記を自動化したものである。

直接活動配分を軽くおさらいしておこう。

  • 直接活動配分は、活動タイプの活動量に応じて原価を振替する方法である
  • 金額はセンダ・レシーバ共にデータ登録される、数量はセンダのみデータ登録される
  • 直接活動配分に使える活動タイプは、活動タイプカテゴリ「[1]マニュアル入力、マニュアル配分」を使う
  • CO伝票の転記は原価要素タイプ「[43]内部活動配分」の二次原価要素を使う
  • センダは原価センタのみ、レシーバは指図など他のCOオブジェクトも指定可能
参照:2-3.管理会計伝票-二次転記

間接活動配分は、周期と同じような設定画面を利用して、直接活動配分を自動化している。活動配分を定期的に実施する場合は、自動化により負荷軽減できる。
※本記事では特長の記載のみ留めて、SAP操作の詳細は要望があれば追記する。

直接活動配分と同じく、以下の特徴がある。

  • 活動タイプの活動量に応じて原価を振替する方法である
  • 金額はセンダ・レシーバ共にデータ登録される、数量はセンダのみデータ登録される
  • CO伝票の転記は原価要素タイプ「[43]内部活動配分」の二次原価要素を使う
  • センダは原価センタのみ、レシーバは指図など他のCOオブジェクトも指定可能

直接活動配分と異なる点が、利用する活動タイプの活動タイプカテゴリ2、もしくは3を使う点である。

  • センダの活動数量が特定できる場合
    • 活動タイプカテゴリ3(手入力、間接配賦)を使う
  • センダの活動数量を特定できない(現実的でない)場合
    • 活動タイプカテゴリ2(間接決定 – 間接配分)を使う

付替・配賦の取消

付替・配賦処理は取消できる。取消は、付替・配賦でできたデータの貸借入れ替えた伝票を登録する。テーブルのデータを物理削除するのではない。

  • 取消はセグメント単位で行う。なお、反復関係は考慮しない。
  • 取消伝票は通常、現在オープンしている会計期間に転記する。例えば、4月の配賦を5月に取消すると、5月の会計期間に取消伝票が登録される。

トランザクションコード

原価センタ会計

登録変更照会削除実行/取消実行のプログラムID
※RKAGAL+????
実績配賦KSU1KSU2KSU3KSU4KSU5RKGALKSU5
付替KSV1KSV2KSV3KSV4KSV5RKGALKSV5
計画配賦KSU7KSU8KSU9KSUAKSUBRKGALKSUB
付替KSV7KSV8KSV9KSVAKSVBRKGALKSVB

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カスタマイズ操作方法

実績配賦の周期・セグメントの登録、および周期の実行まで実施する。実施する内容は、統計キー数値を配賦基準としたシンプルな配賦。まずは基本的な形を理解しよう。

前提条件
  • センダを原価センタ「[CO01]第一工場」として、光熱費を原価センタ「[CO11]組立ライン1」と原価センタ「[CO12]組立ライン2」に配賦する。
  • 配賦原価要素は、「共通光熱費」とする。
  • 配賦基準は、統計キー数値「[KH02]工場専有面積」を利用する。

※各マスタ(原価センタ、統計キー数値)は登録済みとする。新たに登録する場合は、1-2.原価センタ1-5.統計キー数値、参照。

周期・セグメントの登録

周期の登録
  1. SAPメニュー>会計管理>管理会計>原価センタ会計>期末処理>現在の設定>配賦定義(Tr-Cd:KSU1)を起動する。
  2. 周期「SY0001」を入力し、有効日付「2000/1/1」を入力し、Enterを押下する。
  3. テキストに「面積比率配賦(任意)」を入力し、Enterを押下する。
  4. 保存する。

セグメントの登録
  1. (引き続き周期登録画面から)メニューバー>編集>セグメント追加 を選択する。
  2. 以下のデータを入力し、保存する。

「セグメントヘッダ」タブ

設定項目備考
セグメント名(コード)SEG01
セグメント名(名称)光熱費配賦(任意)
配賦原価要素共通光熱費
センダ値
センダ規則記帳済金額
シェア(%)100(%)
実績値 or 計画値実績値
レシーバトレースファクタ
レシーバ規則変動割合
変動部分タイプ実績統計キー数値

「センダ/レシーバ」タブ

設定項目備考
センダ
原価センタ[CO01]第一工場
原価要素光熱費
レシーバ
原価センタ[CO11]組立ライン1 to [CO12]組立ライン2

「レシーバトレースファクタ」タブ

設定項目備考
統計キー数値[KH02]工場専有面積

周期の実行

センダ原価センタに光熱費を計上する
  1. G/L勘定伝票入力(Enjoy)(Tr-Cd:FB50)などから光熱費を計上する。
    ※原価センタ「[CO01]第一工場」、G/L勘定コード「光熱費」を指定すること。
    ※参考:財務会計(FI)3-5.会計伝票の登録

統計キー数値を入力する

  1. SAPメニュー>会計管理>管理会計>原価センタ会計>実績転記>統計キー数値>入力(Tr-Cd:KB31N)を起動する。
  2. 以下のデータを入力して、転記(保存)する。
    ※転記日付「2000/1/1」と仮定する。
項目第一明細第二明細
レシーバ原価センタ[CO11]組立ライン1[CO12]組立ライン2
統計キー数値[KH02]工場専有面積[KH02]工場専有面積
合計数量1020

配賦を実行する
  1. SAPメニュー>会計管理>管理会計>原価センタ会計>期末処理>単一機能>配分>配賦(Tr-Cd:KSU5)を起動する。
  2. 以下のデータを入力して、実行(F8)する。
    ※転記日付「2000/1/1」と仮定する。
会計期間1
会計年度2000
テスト実行OFF
周期[SY0001]面積比率配賦(任意)
開始日付周期マスタの開始日付
  1. 実行結果を確認する。「レシーバ数」をダブルクリックする。
    →各レシーバに配賦された金額が確認できる。配賦原価要素「共通交通費」、1:2の比率で配賦されていることを確認する。
  2. COBK、COEPから登録された伝票を確認する。
    ※参考:周期の実行により登録された伝票を探す方法を教えて下さい

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テーブル

テーブルID内容説明備考
T811C周期マスタ周期情報を保持
T811Sセグメントマスタセグメント情報を保持
T811L配賦/付替: テキスト(長)周期、セグメントのテキストを保持
T811K細かい内容セグメントに指定している設定値を保持。
T811C、T811S、T811Kのテーブルを引っ張ってくっつければだいたいの情報は揃う。
T811D周期実行履歴周期実行履歴、実行時の伝票番号も保持
COBKCO 対象: 伝票ヘッダ
COEPCO 対象: 明細 (期間別)CO伝票の明細(実績
COSPCO 対象: 外部転記の原価合計一次原価要素に関するCO伝票の合計値
COSSCO 対象: 内部転記の原価合計二次原価要素に関するCO伝票の合計値

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