概要
いよいよ伝票登録を行う。ここは習うより慣れろなので、カスタマイズ操作を多めに理解を深めていく。伝票の照会については、次回詳しく解説する。
カスタマイズ、トランザクションコード
- FB50 – G/L勘定伝票入力
- FB60 – 仕入先請求書入力
- FB65 – 仕入先クレジットメモ入力
- FB70 – 得意先請求書入力
- FB75 – 得意先クレジットメモ入力
- FB03 – 伝票照会
会計伝票の登録
会計伝票について:2種類の入力画面とトランザクション
会計伝票を入力する画面は大きく分けて2種類ある。
複合転記画面 | 柔軟性のある伝票登録画面。 色々な仕訳が登録できる代わりに入力する項目は多い。FB01など。 |
Enjoy画面 | 簡単に伝票登録ができる画面。 入力する項目が少ないが、登録できる仕訳は限られている。 転記キーを意識しなくても登録できるようになっている。FB50など。 |
今回は、Enjoy画面を中心に解説していく。また、各トランザクションコードは以下のとおり。
Tr-Cd | 名称 | 備考 |
---|---|---|
FB50 | G/L勘定伝票入力 | G/L勘定のみ使用して伝票登録を行う |
FB60 | 仕入先請求書入力 | 債務(買掛金)を計上するための処理 |
FB65 | 仕入先クレジットメモ入力 | 債務を減らすための処理(例:返品伝票) |
FB70 | 得意先請求書入力 | 債権(売掛金)を計上するための処理 |
FB75 | 得意先クレジットメモ入力 | 債権を減らすための処理(例:返品伝票) |
会計伝票の入力画面(G/L勘定伝票入力:FB50)
大きくヘッダ情報を入力するエリアと、明細情報を入力するエリアに分かれている。
伝票ヘッダ | 仕訳の中身以外の情報を入力する。 ・伝票日付:伝票を登録する日付 ・転記日付:伝票を登録する会計期間を入力する ・伝票ヘッダテキスト:伝票のメモなど ・会社コード ・伝票タイプ ・取引通貨:海外との取引でドル建ての取引をする際などに利用 ・換算レート:取引通貨を会社で扱う通貨に換算するレート、 換算日付から自動入力される ・税額計算:税額を計算する場合、フラグをONにする |
伝票明細 | 仕訳の中身に関する情報を入力する。 ・G/L勘定 ・D/C:借方or貸方 ・伝票通貨額:明細の金額を入力 ・税:税額を計算する場合、税コードを入力する ・各組織マスタ(原価センタ、利益センタ、セグメント、事業領域など) |
借方/貸方の表示について
仕訳の中身となる明細は、SAP画面上で見ると一覧形式になっている。仕訳のように左右に表示されていないため、最初は戸惑うかもしれない。
貸借の見分け方は、明細行ごとに「借方」or「貸方」が列として設けられているので、そこで判断する。もしくは、明細の金額がプラスであれば借方、マイナスであれば貸方、と判断することもできる。この貸方をマイナス金額で表示する方法は、SAP独特である。
DB上では、この借方or貸方を「D/C」という項目で管理しており、「S:借方」「H:貸方」となっている。DBによるが、金額は絶対値(プラス・マイナスの符号がない金額)で登録されていることが多いため、手元で計算する場合は注意すること。
会計伝票の入力画面(仕入先請求書入力:FB60)
ヘッダ情報と明細情報を入力することは、FB50:G/L勘定伝票入力と変わらない。ポイントは、仕入先コードを入力すると、自動で買掛金に変換して伝票登録してくれるということ。これにより貸方の買掛金情報が自動的に決まる。そのため、明細エリアには買掛金の相手勘定の情報のみ入力すれば済む。
また、仕入れに関する情報(支払先や支払期日、支払方法など)を伝票ヘッダに入力する点が、FB50:G/L勘定伝票入力と異なる。
本ページでは、FB60:仕入先請求書入力を紹介したが、その他のFB70:仕入先請求書入力なども実際の画面を見てほしい。基本的な構造は同じであるが、伝票登録の用途が異なるため、入力する項目が異なっている点に気付ける。
消費税について
消費税明細は税コードから自動登録される。必要に応じて伝票ヘッダの「税額計算」フラグを設定することで、自動で税額を計算してくれる。
- 税額計算フラグ:オン
- 明細に税込み金額を入力する
→税コードを使用すると、消費税の金額が自動計算される
- 明細に税込み金額を入力する
- 税額計算フラグ:オフ
- 明細に税抜き金額を入力する
→ヘッダの「税額」項目に消費税の金額を入力する
- 明細に税抜き金額を入力する
カスタマイズ操作方法
今回は、経費の支払、商品の仕入(買掛金の計上)、得意先への商品販売(売掛金の計上)を想定した計3パターンの伝票を登録する。
※各G/L勘定コードが登録されていない場合は、財務会計(FI)2-1.G/L勘定(総勘定元帳勘定)を参照して勘定コードを登録すること。
※伝票タイプが入力可能になっていない場合は、「編集オプション」ボタンを押下し、伝票タイプオプションを「省略名で入力」にする。
G/L勘定の会計伝票を登録する:FB50
経費の支払を想定し、会計伝票を登録する。
- 会計管理>財務会計>総勘定元帳>伝票入力>G/L勘定伝票入力(Enjoy) を選択 を選択する。
- 伝票情報を入力する。
伝票ヘッダ | |
転記日付 | 2020/4/1 |
第1明細 | |
G/L勘定 | [C00001]経費 |
D/C | 借方 |
伝票通貨額 | 1,000 |
原価センタ | CO01 |
第2明細 | |
G/L勘定 | [A00001]現金 |
貸方 | 貸方 |
伝票通貨額 | 1,000 |
- メニューバー>シミュレート(F9) で伝票を確認する。
- 転記(保存)する。
仕入先からの請求書を登録する:FB60
次は商品の仕入れを想定し、仕入先からの請求に伴う会計伝票を登録する。
- 会計管理>財務会計>債務>伝票入力>請求書(Enjoy) を選択する。
- 伝票情報を入力する。
仕入先からの請求書の登録は、仕入先「Vendor01」より買掛金が決まるため、明細には買掛金の相手勘定の入力のみ行う。
伝票ヘッダ | |
仕入先 | Vendor01 |
請求書日付 | 2020/4/1 |
転記日付 | 2020/4/1 |
伝票タイプ | [KR]仕入先請求 |
金額 | 110,000 |
通貨 | 会社コード通貨 |
税額計算 | ON |
税コード | [X5]消費税8% – 仕入 |
明細 | |
G/L勘定 | [A00011]商品 |
D/C | 借方 |
伝票通貨額 | 110,000 |
税コード | X5 |
原価センタ | CO01 |
- メニューバー>シミュレート(F9) で伝票を確認する。
- 転記(保存)する。
得意先への請求書を登録する:FB70
次は得意先へ商品の販売を想定し、売掛金/売上の伝票を転記する。
- 会計管理>財務会計>債権>伝票入力>請求書(Enjoy) を選択する。
- 伝票情報を入力する。
得意先への請求書の登録は、仕入先と同様、得意先「Customer01」より売掛金が決まるため、明細には売掛金の相手勘定の入力のみ行う。
伝票ヘッダ | |
得意先 | Customer01 |
請求書日付 | 2020/4/1 |
転記日付 | 2020/4/1 |
伝票タイプ | [DR]得意先請求 |
金額 | 22,000 |
通貨 | 会社コード通貨 |
税額計算 | ON |
税コード | [C5]課税売上8% |
明細 | |
G/L勘定 | [P00001]売上 |
D/C | 貸方 |
伝票通貨額 | 22,000 |
税コード | C5 |
利益センタ | PR01 |
- メニューバー>シミュレート(F9) で伝票を確認する。
- 転記(保存)する。
会計伝票の確認:FB03
最後に転記した伝票を照会する。
- 会計管理>財務会計>総勘定元帳>伝票>照会 を選択する。
- 伝票転記時に表示される伝票番号、会社コードを入力し、Enterを押下する。
- 転記済みの伝票が表示されることを確認する。
テーブル
テーブルID | 内容説明 | 備考 |
---|---|---|
BKPF | 会計伝票ヘッダ | 会計伝票のメインテーブル。ヘッダ情報を保持。 S/4以降は、ACDOCAテーブルに統合されている。 |
BSEG | 会計伝票明細 | 会計伝票のメインテーブル。明細情報を保持。 S/4以降は、ACDOCAテーブルに統合されている。 |
ACDOCA | ユニバーサルジャーナル | 従来のヘッダと明細(BKPFとBSEG)が合体した形のテーブル。 明細単位でレコードを保持する。 |
BSET | 税データ | |
BSAD | 得意先別決済明細データ | |
BSAK | 仕入先別決済明細データ |
演習問題
※複数回答の設問あり。
※答えはドラッグすると見れる。
会計伝票を登録する際、貸借の金額が一致していない場合の挙動を選べ。
A. 転記を実行するとエラーになる。
B. 転記を実行するとワーニングになる。
C. 未転記伝票として保存できる。
D. 仮保存として保存できる。
正解:AD
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