概要
原価要素、原価要素グループについて解説する。G/L勘定コードの知識が前提になるため、財務会計(FI)2-1.G/L勘定(総勘定元帳勘定)もあわせて確認いただきたい。
カスタマイズ、トランザクションコード
- FSP0 – 勘定コードマスタ登録(勘定コード表)
- FSS0 – 勘定コードマスタ登録(会社コード)
- FS00 – 勘定コードマスタ登録
- KA01 – 一次原価要素登録
- KA02 – 一次原価要素変更
- KA03 – 一次原価要素照会
- KA04 – 一次原価要素削除
- KA06 – 二次原価要素登録
- KA23 – 原価要素照会(一括)
- KAH1 – 原価要素グループ登録
- KAH2 – 原価要素グループ変更
- KAH3 – 原価要素グループ照会
原価要素
G/L勘定(総勘定元帳勘定)について
まずは、G/L勘定の全体像を押さえておこう。G/L勘定は、総勘定元帳で利用する勘定コード。現金、売上、買掛金、売掛金など。業務的な勘定コードとほぼ同義である。※参照:財務会計(FI)2-1.G/L勘定(総勘定元帳勘定)
G/L勘定コードは、次のように分類される。このうち、管理会計で主に使う勘定は、一次原価と二次原価である。
勘定の分類(勘定タイプ)
- 貸借対照表勘定
- そのままB/S勘定。売掛金、買掛金など。
- 現金勘定(銀行統制勘定)※S/4 2020以降、利用可能
- 現預金勘定。G/L勘定に対して複数の取引銀行口座を紐付けできるようになった。これにより口座ごとにG/L勘定を作成しなくてよくなった。
- 営業外費用または収入
- 簿記の営業外収益・費用と同義。受取利息、支払利息など。
- 一次原価または収益
- 財務諸表に載せる収益、費用。収益は売上高や売上控除、費用は販売費や給与など。
- 二次原価
- 管理会計内で使う勘定。一次原価を管理会計目的で配分する際に利用する。共通材料費など。
原価要素
上記のうち、一次原価と収益、二次原価を原価要素という。また、一次原価と収益は一次原価要素、二次原価は二次原価要素とも呼ばれる。
- 一次原価要素
- 財務諸表に表示される費用、および収益勘定。
- 二次原価要素
- 財務諸表に表示されない、管理会計(CO)内で使う費用勘定。配賦や決済で利用する。
※参考:3-2.付替・配賦
※参考:付替・配賦:KSU1、KSV1、3KE1、4KE1、KEU1
- 財務諸表に表示されない、管理会計(CO)内で使う費用勘定。配賦や決済で利用する。
押さえておくべきポイントは、次のとおり。
- 会計伝票(FI伝票)登録など、原価要素を指定して伝票を転記する際、COオブジェクト(原価センタ、内部指図、WBS、CO-PAセグメントなど)を指定する必要がある。
- 管理会計内でのみ利用される。
設定項目
原価要素の設定項目について、G/L勘定と共通する項目が多いため、まずは財務会計(FI)2-1.G/L勘定(総勘定元帳勘定)で基本の設定項目を押さえてほしい。そのうえで、原価要素として追加で必要な設定項目は、次のとおり。
- 原価要素タイプ
- 原価要素タイプは、原価要素の登録時に指定するパラメータで、これが一次原価要素か二次原価要素かを決定している。
・一次原価要素の場合は、収益や売上控除、一次原価といったタイプを選択する。
・二次原価要素の場合は、内部決済や配賦、内部活動配分を選択する。
※メインどころの設定値は、以下のとおり。
- 原価要素タイプは、原価要素の登録時に指定するパラメータで、これが一次原価要素か二次原価要素かを決定している。
勘定タイプ | 原価要素タイプ(コード値) | 原価要素タイプ(名称) |
---|---|---|
一次原価または収益 | 01 | 一次原価/収益削減原価 |
11 | 収益 | |
12 | 売上控除 | |
22 | 外部決済 | |
二次原価 | 21 | 内部決済 |
31 | 指図/プロジェクト結果分析 | |
41 | 間接費率 | |
42 | 配賦 | |
43 | 内部活動配分 |
S/4では、原価要素はACDOCAに統合されている
R/3では、財務会計のG/L勘定コードと、管理会計の原価要素は別々の存在であった。ただし、S/4以降ではACDOCAの登場により、両者が統合された形になっている。
統合に伴い、利用するトランザクションがFS00にまとめられている(KA○○は廃止)。また、更新するテーブルも変わっている。
※KA06の更新テーブルについては、うろ覚えのため、正確な情報が分かり次第更新。
時間依存性について
時間依存とは、履歴管理されているということ。原価要素は、マスタが履歴管理されており「時間依存性がある」という言い方をする。
※時間依存性のイメージは、原価センタを参照。
原価要素グループ
原価センタグループと同じく、原価要素をグルーピングしたもの。こちらも原価要素グループの中に原価要素グループを持てる。つまり、階層構造を持っている。
また、原価要素グループのテーブルも原価センタグループと同じ構造をしている。詳細は原価センタグループ、利益センタグループ、原価要素グループのテーブルを教えて下さいを参照。
原価要素グループのバックアップ
原価要素グループには時間依存性がない。その代わり、接尾語という方法が用意されている。接尾語は、既存の原価要素グループに 「.」+Max4文字 を付与して階層ごとコピーする手法である。これによりグループのバックアップ機能としている。
※参考:原価センタグループのバックアップ
カスタマイズ操作方法
原価要素の登録
原価要素の登録には、勘定コード表の事前設定が必要だが、これはすでに設定済みとする(参照)。原価要素の登録については、まず勘定コード表レベルとで登録し、次に会社コードレベルで登録する。今回は別々に登録するが、まとめて登録する場合はTr-Cd:FS00で可能。
勘定コード表レベル:FSP0
- SAPメニュー>会計管理>財務会計>総勘定元帳>マスタレコード>G/L勘定>個別処理>勘定コード表 を選択する。
- 「G/L勘定」に勘定コード(例:C00001)、「勘定コード表」に登録した勘定コード表「JP01」を入力し、「登録」ボタンを押下する。
- 「G/L勘定タイプ」にて「一次原価または収益」を選択し、テキスト(例:経費)を入力して「保存」を押下する。
会社コードレベル:FSS0
- SAPメニュー>会計管理>財務会計>総勘定元帳>マスタレコード>G/L勘定>個別処理>会社コード を選択する。
- 先ほど登録した勘定コード、登録対象の会社コードを入力し「登録」ボタンを押下する。
- 次の各項目を入力し、「保存」ボタンを押下する。
勘定通貨 | JPY |
原価要素タイプ | 01:一次原価/収益削減減価 |
原価要素グループの登録:KAH1
登録の操作方法は、原価センタグループと同じ。
【起動経路】
SAPメニュー>会計管理>管理会計>原価センタ会計>マスタデータ>原価要素グループ>登録(Tr-Cd:KAH1)
テーブル
テーブルID | 内容説明 | 備考 |
---|---|---|
SKA1 | G/L 勘定マスタ | 勘定コード表レベルのデータを保持 |
SKB1 | 勘定コードマスタ (会社コード) | 会社コードレベルのデータを保持 |
SKAT | 勘定コードマスタレコード | 勘定コードのテキスト情報を保持 |
CSKA | 原価要素 (勘定コード依存データ) | |
CSKB | 原価要素 (管理領域依存データ) | |
CSKU | 原価要素テキスト | |
SETHEADER | セットヘッダとディレクトリ | グループの基本情報ほ保持、SETHEADERTにグループのテキスト情報を保持。 |
SETNODE | セットの下位レベルセット | グループの中にグループがある場合は、SETNODEで子グループの情報を保持 |
SETLEAF | セット値 | 末端のマスタを保持 |
コメント
こちらのサイトにはいつも大変お世話になっております。
初歩的な質問ですみません、
原価要素タイプの表のところで、原価要素コード = 01 の名称が「一次原価/収益削減原価」になっているのですが、こちらは「一次原価/原価削減収益」ではないのでしょうか。
SAPの公式ページの解説を読んでいて気になりました。
↓
https://help.sap.com/docs/SAP_S4HANA_CLOUD/c56f622a2edf491b9f1b596b55587009/8196ebe296f54f9990eca346df4e02b4.html?locale=ja-JP
いつも当サイトをご覧いただきありがとうございます。
たしかに該当のリンク先は「一次原価/原価削減収益」となっていますが、SAP実機画面を確認すると「一次原価/収益削減原価」となっていました。当サイトは実機画面をベースに記載しております。そのため、SAPの公式ページと比較すると、多少の表記揺れは発生する可能性があります。ご了承ください。
なるほどです、早速のご回答ありがとうございます!
英語版だと「Primary costs/cost-reducing revenues」になっているので、単なる実機版の誤訳と解釈してよろしいでしょうか?